7月に打ち上げられた中軌道衛星(MEO) GreenCube、最近になって 435MHzのデジピータが解放された。
なにしろ 高度が 6000kmくらいあるので、ヨーロッパ全域(あるいは北米全域)との交信も可能なのである。
GreenCubeの本来の目的は、超小型衛星での自律的植物栽培実験ということらしいが、それについてはリンク先をご覧いただくとして、ここでは 空飛ぶデジピータ*1としての GreenCubeに焦点を絞ることとする。
衛星の形態は いわゆる 3U。一辺10cmの立方体 3個を積み重ねた形だ。アンテナは 公表された 調整中の写真や イラストから 1/4波長のホイップを 4本移相合成した ターンスタイルと推定した。
ターンスタイル・アンテナは エレメント展開面と垂直方向には円偏波を放射するが、展開面と平行方向への放射は 直線偏波となってしまう。GreenCubeが軌道上で どのような姿勢*2でいるのか定かではないため、偏波については注意が必要である。
公称の周波数は、435.310MHz*3。電波型式は 1200bpsのパケット(PKT)だが GMSKであり、以前ポピュラーだった AX25.でもないため 大昔のTNCではデコードすることができない。
手動追尾VFOと Soundmodemで GreenCubeの Beaconと思われる信号はデコードしたものの、その先には進めず。
約2時間半後のパスで XXK AFZ FIHの国内3局を手動運用で受信。試しに送信してみたところ、まぐれでACK返ったけれどデジピートされず。LBW FCJの2局に呼ばれたものの、返すこと能わず。
PCによる Rig Control*4は必須であろう。それに、仰角20度超えると 仰角5度の12エレ*5では もうかなりキツい。6000kmは遠い。
W5CBF*6から FIH局に送られたメッセージを受信して感動する。デコードできたりできなかったり、各局でバラバラのようだ。
それなりに有名なソフト SatPC32を導入*7し、四苦八苦して設定。いちおう起動したものの、使い勝手が特殊 (^^;)。*8
19時のパスで ついに W5CBF、WA5KBH*9、FIH局と交信。その後の 21時のパスで XXK局ほかのJAsとも交信できた。
なお、SatPC32は パケット信号のデコードまではやってくれないため、デコードは soundmodem を、デジピーティング・クライアントとしては GreenCubeDigi を使用。
greenTNC.bat
@echo off start C:\tools\HAM\GreenTNC\soundmodem.exe start C:\tools\HAM\GreenTNC\GreenCubeDigi.exe
7日から引き続いて 00時を跨ぎ、00時~01時台のパスで BG7XWF BG5UZW VU2LBW A65BR K8DP*10らと交信。
いったん仮眠して 次の05時台のパスで IK7EOTと交信。ついにヨーロッパまで来た!!
この後、GreenCubeは 1週間のメインテナンスに入るとの メッセージが公表された。
この間、周波数追尾の微調整を実施。また、SatPC32以外の Rig Controlソフト hamlibの rigctldと Gpredictでも 一応の追尾は可能であることを確認。
rigc.bat*11
@echo off rem IC-9700のメニューで CI-VとREMOTEを切断する。 rem GreenCubeの場合、IC-9700はサテライト・モードではなく 通常のスプリット運用モード。 rem GpredictのRadio Control画面で デフォルトの周波数を手打ちする必要あり。 path C:\tools\ham\hamlib-w64-4.5\bin start rigctld --model=3081 --rig-file=COM4 --ptt-type=DTR -vvvv
GreenCube デジピータ運用再開。
I4EUM IW7DOL VA7LM NA1SA DU9JJY らと交信。
次のパスは日付を跨いで 03~04時台 DL5GAC DL6KBG KB6LTY WA5LRC と 交信。
いったん睡眠。Now Gonna sleep again. CU!
07時台 スペイン EA1DR EA4CYQ EA4SG、スコットランド 2M0SQL と 交信。Now Gonna have breakfast. No sleep anymore. CU! てな具合・・(^^;)
この後のパスはビーコンのみで デジピータは OFFだったもよう。
21時過ぎのパスで KE8RJU F4BKV と交信。フランスとはギリギリだった。リニア衛星だったら 白神山地の仰角 2度まで余裕だが、GreenCubeでは 3.5度で もうキビしい。
現時点での問題・・
2022.11.28 追記:
GreenCube Designated Italy-OSCAR 117 (IO-117)
・・ってことで、AMSATから GreenCubeに オスカーナンバが付与されたとのアナウンスがあった。
ところで・・ IO-117は 円偏波でみると Nullは無いのだが、水平または垂直偏波でみると Nullがあるようだ。1パスの中で何度も信号強度が変動するのは、姿勢の問題なのだろうか。ファラディ回転もあるだろうけど、変化量はもっと緩いだろう・・
MMANAでシミュレートしてみた。直線偏波では -40dB程度まで落ち込む場合がある。もっとも本当にこのような姿勢になっているのか、あるいは この姿勢になる可能性があるのかどうかは 現時点では不明。
前述の 周波数の跳び 問題に対応した SatPC32の新バージョンが出たが、衛星自体もQRHしているようだ。QRHすると 当然ながらデコードできない場合がある。とりあえず、しばらく様子見ということで・・
2022.12.24 追記:
本件は ここで いちおう締めることとする。
追記・・ GreenCube関連記事
*1 1990年前後の アマチュア無線パケット通信時代を知らない方々には 馴染みが無いかも。受信したデータをオウム返しに再送信するシステム。
*2 あるいはスピン
*3 SatPC32の Doppler.SQFファイルには 435308.65 と記載した。各々のRig等でも異なる。全世界一律ではない。
*4 特に周波数
*5 垂直偏波
*6 USA ルイジアナ州
*7 最終的には AMSATのストアからダウンロードした。
*8 自分ひとりで使うんだったら、こう作ってしまうかもしれない・・というのは理解できる。(^^;)
*9 この局もルイジアナ
*10 ミシガン
*11 Gpredictの Radio Controlの前に起動する。
*12 NASAやNORADから提供される軌道要素ファイル
*13 例えば SO-50 や ISS