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[Radio] 太陽光発電ノイズ・征服

2018年12月30日 23時 更新

ソーラーパネルのアンテナ化とコア挿入対策について 2

ノイズ源様宅の太陽光発電ノイズによる受信障害については 3月某日に対策作業を実施していただき、3dBの改善がみられました。この時点では たった 3dBなのか・・もっと改善できなかったのか・・と残念でした。
同日付けで ▽△工務店 担当様にもメールさせていただきましたが、対策としては まだまだ不十分と認識しております。

ですが、その後チェックしてみると、最も邪魔になる「キュルキュル」というおそらくPWMなノイズについては、3dB以上落ちているのではないかという印象があり、さらに調査する必要があるものと思われました。この件については 4月某日に パワコン製造元 担当様宛メールさせていただきました。

当方の家庭環境に起因する問題等もあり かなり遅れてしまいましたが、ノイズの現状と当方での考察結果について報告させていただきます。


実は、対策作業後 11月まで*1の観測では、問題の「キュルキュル」ノイズは、3月某日の対策作業前に比して 7dB以上低減しております。

なお、前述の 3dB・・というのは、50.196MHz付近に存在する連続する濁った(50Hzで変調された)キャリアの強度低下について言及したものです *2。問題の「キュルキュル」ノイズは発生機序に不明な点があり、パワコンが稼働していてもノイズが発生しないことがあるほか 出現周波数*3も変動するため、パワコンONで必ず出る この50.196MHz付近のノイズをリファレンスとしておりました。

しかしながら、7dB以上低減といいましても、まだ十分に邪魔な存在ではあります*4。また、ローカルさん宅でも同程度のノイズ低減を確認できましたが、こちらは距離約90mと近いだけあり、未だ強力なノイズとして受信できてしまいます*5。当然ながら 追加のノイズ対策が必要です。


さて、前回の当方からの提案では 10dB以上の改善を目指していたわけですが、なぜ それに到達できなかったのか・・
それはやはり、パワコンから太陽電池パネルに至る配線だけではなく、パワコンから電柱に至る系統電源側の配線もまたアンテナとして機能しているからでしょう。
前回シミュレーションではパワコンから電柱に至る配線は考慮しておりませんでした。*6

考えてみれば、無給電のはずのソーラーパネル地線にまでノイズが乗っているのですから、系統電源側へのノイズ誘導があるとしても何らおかしくないのです。


そこで、再びアンテナシミュレーション・ソフトMMANAによるノイズ源宅のソーラーパネル及び各ストリング等のモデル化をおこないました。

3月某日の対策作業以前


今回は系統電源側のラインを追加してデータ化しておりますが、きりがないので近くの柱上トランスまでとしています。セグメント数は約3500。

まず、 3月某日の対策作業以前の状態をシミュレートします。

左図のとおり ソーラーパネル及び系統電源側ラインにノイズが重畳しています。
高周波電流の振幅は系統電源側よりもソーラーパネル側の方が小さくなっており、過去の対策作業による効果も ある程度出ているものと思われます。


次は 3月某日の対策作業後の状態です。

3月某日の対策作業後

ソーラーパネル上のノイズは ほぼ抑止できていますが、系統電源側については十分ではないようです。

3月某日の対策作業の内容は、最初に屋根裏の配線(地線を含む)に20cm間隔でコア(北川工業RFC-20 *7 2T)を挿入。
しかし改善がみられなかったことから、コアの間隔をパワコン側を起点に20cmから10cm間隔に変更し、かつパワコンの系統電源側(ACライン)のコアを日立金属FT-3K50T 1T 1個 (50MHzで約80Ω)から 北川工業RFC-20 1T 4個(50MHz 1Tで220Ω 4個=880Ω)に変更。

このときの最初の作業では、50.196MHz付近のノイズについては改善がみられなかったのですが、前述のとおり、キュルキュルノイズ自体は この時点で 既に7dB程度低減できていたものと思われます。

リファレンスとしてターゲットにしていた50.196MHz付近のノイズはソーラーパネル側ではなく 系統電源側から漏れ出る成分が多かったのでしょう。次の作業で系統電源側のコアを性能の良いものに変更し、かつ4段とすることで当該ノイズは 3dB低減されたというわけです。


さて、問題のキュルキュルノイズが現時点で 当初から 7dB程度改善されていることは前述のとおりですが、これまでの対策から推しはかると やはり 系統電源側への対策が不十分と言わざるを得ません。

パワコン筐体内には コア設置のための空きスペースは もう無いと思われますが、系統電源側の配線は壁の中を通って屋外の電力メータに至っているわけで、 壁をはがして配線にコア挿入すれば簡単に対策可能なはずです。

当方としては ぜひ この対策を実施していただきたいのです。ノイズを あと 5dB程度低減できれば 背景雑音(ノイズフロア)レベルまで落ち 検出困難になるのではないでしょうか。


そこで、とりあえず一番簡単にできるテストとして、電力メータのところで露出しているケーブルにコア挿入するというシミュレーションを作成しました。

ふたつ(受電用&発電用)の電力メータ付近の黒いケーブルの外径は1.5cm。北川工業 RFC-20なら2cm径まで扱えます。露出しているケーブル長は 右側 33cmと 左側 28cm *8。したがって RFC-20を 右側に 7個、左側に 5個 計12個挿入することが可能と思われます。(もっとも、コアを近接して設置しても十分な効果は得られにくいかもしれません。)

次回改善措置後予測


50MHz帯におけるRFC-20のインピーダンスは約220Ω。12個で 220*12=2640Ω。これをケーブルの露出部分に挿入することで ノイズ低減が可能であろうと考えられます。

もちろんノイズ源のパワコンに近い壁内部の配線に処置できれば さらなる低減が可能であることは いうまでもありません。

シミュレーションの演算結果は左の図のとおりです。前掲のふたつの図と比べると判りますが、系統電源側の地上高が高い部分に漏洩するノイズの抑制に成功しています。


仰角2度方向への放射パターン比較


前回同様に 放射されるノイズの強度も計算してみました。

ノイズ源様宅の屋根から当方のアンテナを見上げる仰角は約2°なので、仰角2度方向への絶対利得で 2018.3.某日作業以前: 緑、作業後: 赤、改善案: 青を比較。


仰角9度方向への放射パターン比較


また、ノイズ源様宅の屋根からローカルさんのアンテナを見上げる仰角は約9°なので、仰角9度方向への絶対利得で 2018.3.某日作業以前: 緑、作業後: 赤、改善案: 青を比較。

図のとおり 仰角2度方向、9度方向ともに 相当のノイズ低減が期待できると思われます。
なお、シミュレーションどおりとはいかない可能性もありますが、水平面指向性絶対利得の円グラフの40度がローカルさん宅、220度が当方の方向です。


以上のとおり、前述した改善案を実施することでノイズレベルは さらに10dB程度改善でき*9、当方では検出困難レベル近くにまで低下。ローカルさん宅での障害も相当緩和されるものと推測します。

ぜひ、再度ご検討いただき、パワコンノイズが上昇する3月下旬頃までに対策完了となるようお願い申し上げます。これで最後にできるものと確信しております。



太陽光発電ノイズについては、2015年11月 2016年4月 2018年1月 に書いた。いろいろあって かなり遅れてしまったが、本アーティクルは その続報である。

ということで、本日 上記内容メイルを 施工工務店及びパワコン製造元に送付。
けっきょく・・またしても・・ To Be Continued...

次回のタイトルは『最後の太陽光発電ノイズ』にしたいものだ・・*10


*1 ソーラー発電ノイズの強度は なぜか 3~5月 9~11月が高い。日照だけではなく 気温も関係あるのか?

*2 このキャリアでは Sが振らないので、RigのAF出力をパソコンのAFスペアナ・ソフトに入力して AFレベルで測定した。

*3 なぜか 50.170~50.300MHzに出ることが多い。35~45kHz間隔で 並んでいるようにも見えるので、そのへんがインバータのスイッチング周波数か?

*4 当初の未対策時のように Sメータが盛大に振るということはなくなったが、S1~2程度 振れることはある。

*5 ローカルさん宅では 28MHz及び50MHzのみ。その他のバンドでは検出できない。当方自宅での障害は 50MHzのみ。

*6 パワコン製造元は、系統電源側には マトモなフィルタが入っていると言っていた。しかしたぶん ノーマルモードしか測定してないのだろう。コモンモード・ノイズの測定は不可能ではないが、複雑かつコスト的に難しくなってしまう。

*7 インピーダンス的には NEC/TOKINの ESD-SR-250と ほぼ同等か。ただし、内径はデカい。

*8 もちろん敷地内に侵入して長さを直接図ることはできないので、離れたところから撮影し、電力メータに使われている内外電機のプラスチックボックスの寸法をもとに写真判定で算出した。

*9 系統電源側については、パワコンの基板上でフィルタを増設することにより コア挿入などの外部フィルタ無しでも それなりのノイズ低減が期待できるのではないだろうか。けっきょく設計者の気合いが足りないのか、コスト重視でノイズ対策部品数を抑制しようという企業の姿勢が問題なのか・・

*10 タイトル 征服・・に あまり意味は無いので ヨロシク。

Tada/JA7KPI : 2018年12月20日(木)

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