今しばらく・・が、もうすぐ11か月経過しようとしております。
> 1. 4月16日の対策作業のパワコン製造元からの報告書をご提示ください。
> 2. 4月16日の対策作業の過程でノイズ源がソーラーパネル設置者様宅であることは明らかになりましたが、これについての設置者様への通知日時はいつでしたか。この2項目については、すぐにでもご回答いただけるのではありませんか?
・・などと催促のメイルを送っていた。
したっけ、昨年11月20日、施工工務店の担当者から突然メイルが届いたのである。
曰く、
本日、パワコン製造元の技術の者と共に設置者様宅の屋根裏で太陽光モジュール設置の最も高い部分において出来得る限りのリングコア対応を行いました。 (中略)低減が見られるか ご確認をお願いします。
なんなの!? この唐突さ。▽△工務店 大丈夫なのか?? とりあえず それは置いといて、メイル返信。
対応ご苦労さまでした。しかし、作業前に連絡をいただければよかったと思います。
さて、本日未明から降雪があり、現時点ではパワーコンディショナは稼働していないものと思われます*1。 設置者様宅屋根にも積雪が確認でき、お宅の前で受信してみてもノイズはありませんでした。
天気予報によりますと、雪は いったん融けるものと思われますので、その際に再度チェックしたいと考えております。
しかし・・ あろうことか・・
ノイズは低減するどころか、逆に 悪化してしまったのである。
▽△工務店担当者様
太陽光発電ノイズについて再度チェックしてみました。
結論から申し上げますと、ノイズ低減はまったく認められず、むしろ少し悪化しております。*2
これについては当方もまったく予想だにしておりませんでした。むしろ相当の低減効果が出るだろうと安堵していたくらいです。まず、ノイズ発生源が以前と同じく設置者様宅なのかどうか、これを検証しました。
数日かけてノイズの強度と到来方向をチェック。また、設置者様宅以外でのノイズ発生がないかの踏査チェック。その他ノイズのスペクトラム等についても以前のデータと比較しました。その結果、やはりノイズ発生源は以前と同じ設置者様宅と断定せざるを得ませんでした。
先のメイル後、施工工務店担当者から11月20日の作業時の画像ファイルが送られてきていた。
屋根裏を写したと思しき写真には 1ストリングあたり6個、4ストリングで計24個のコアが写っている。これはTDKのZCAT 3035-1330のように見える。
パワーコンディショナで発生した50MHz近傍のノイズは各ストリングを通じて屋根の太陽光モジュールに到達し、その端点で反射することで 太陽光モジュール~各ストリングに定在波が乗り、アンテナとして機能するようになります。 定在波が乗るということは、各ストリングの位置によって高周波電流の振幅が違うということです。
コアは受動素子ですから、高周波電流の小さい部分に入れても効果はありません。
また、仮に高周波的にストリングを切断するのと同等な効果があったとしても、切断によって定在波の分布が変化することでストリングからの放射によって屋根の上の太陽光モジュールの配線に高周波電流が誘起してしまい、コア挿入の効果が得られないばかりか電流分布変化によりノイズが悪化してしまうことも考えられます。
それでは、どの位置にコアを入れれば効果的にノイズ低減可能なのか。それはいうまでもなくノイズ発生源であるパワーコンディショナの端子近傍です。
これについては以前 パワコン製造元担当者様には、端子直近だけでなく端子から3mの範囲内で複数個のコアを挿入することで効果Upが期待できる旨メールにてお知らせしてありましたから、今回の対策ではパワーコンディショナにできるだけ近い箇所へのコア設置を期待しておりました。
しかし、実際の作業ではパワコン端子近傍ではなく、真逆の太陽光モジュール近傍へのコア設置となってしまったのである。
まったくもって・・ 違うだろー! 違うだろーー!! ・・と叫びたい。
壁の中ではなく屋根裏でしか対策できないのであれば、下の階から昇ってきた各ストリングが屋根裏に出てきた その根元にコア対策をしなければならないのです。
写真では画面の奥の高い部分から順にコアを入れているように見え、手前のパワコンに近い部分にはコアは入っていないようです。
できるだけ低くノイズ源に近い位置で阻止することによって、ノイズの高周波電流が大きい部分と屋根上の太陽光モジュールの距離を大きくでき、その結果、太陽光モジュール側に誘起する電流も小さくなります。 また、屋根上の太陽光モジュールだけではなく、各ストリング自身もアンテナの役目をしていますから低い位置へのコア設置は重要です。
それから、写真には4組のストリングの他にもう1本電線が写っています。これは、太陽光モジュールの枠に接続されるアース線ではないでしょうか。
とすれば、パワーコンディショナの端子とはつながっていないにしても各ストリングと10m以上にわたって非常に近接した状態にあるわけですから、誘導等によりアース線にもノイズが載っている可能性が大きいことになります。 したがって、4組のストリングの他にこのアース線にもコア対応が必要です。(中略)
最善の方法としては、次のように考えられます。『パワーコンディショナから壁~屋根裏を経由して屋根の上へ抜ける各ストリング及びアース線の全域に20cmごとにコア(2T)を設置する。』
全域としたのは、現場の配線長、太さ、位置関係、周囲の誘電体の状況等を完全に把握するのは極めて困難で、定在波の電流分布が実際はどうなっているのかが現場でかなり詳細に測定しない限り判らないからです。費用もかかりますし、判らないのであれば全領域にコアを入れるしかありません。
・・と、以上のようなことを書いて とりあえずメイルした。
しかし、全域にコアを入れるとなると、壁をはがしたり、コアに2回巻するストリングの電線長が足りなくなるなど作業が大がかりになってしまう。
もっと簡単な方法はないか・・
この後、施工工務店担当者経由でパワコン製造元担当者から11月20日の作業報告PDFファイル(2016年4月の作業報告も含む)が届いた。*3
それによれば、挿入したコアは次のとおり。
太陽光モジュール側から TDK ZCAT 3035-1330 1T(1個あたり約150Ω)×3個 + 北川工業 RFC-20-A 2T(1個あたり約880Ω)×3個 設置間隔は約50cm。
以前、ZCATより NEC-TOKINのESDコアの方が良いんじゃないかってメイルしたのに・・ ここでも逆なのね。しかも ZCATに 1T・・ (^^;)
・・てことで、考えた末、次のようなプレゼン文書を作成。
モーメント法によるアンテナシミュレーション・ソフトMMANAによるノイズ源宅のソーラーパネル及び各ストリング等のモデル化をおこないました。セグメント数は約2500。 fig.1
各ストリングは接地点との間でコモン・モードで給電。各ストリングの位相は完全逆相にならない程度に左から右に0° -45° -60° -90°としました。*4
また、2015.12.24及び2016.4.16のパワコン内部対策としてパワコン端子近傍に コア8t(2500Ω)とコア2t(320Ω)を挿入してあります。接地抵抗は150Ωと設定。
なお、アース・ラインにも コア8tが挿入されていますが、大地面までは数十cmしかなくパワコン筐体のサイズ(概ね 1m×0.5m×0.2m)を考慮すれば50MHzでの効果はほとんど期待できないため、このシミュレーションでは90Ωという小さな値で計算。*5
なお、ソーラーパネルの10cm下に矩形の枠を置き、パワコン筐体からのアース線と接続してあります。*6
前述モデルの計算結果により各素子上の電流分布を表示。盛大に電波が乗っています。 fig.2 *7
次に、コア挿入位置の判断材料として各ストリングを物理的に切断した場合を想定。fig.3
切断位置は階下から上ってきた各ストリング及び地線が屋根裏を横切り分岐するポイント。
切断によるギャップは1cmと設定。物理的に切断しているにも関わらず、ソーラーパネルに電波が乗っています。これは屋根裏を横切る配線の励振によるものでしょう。
切断位置を階下から屋根裏に出てきた根元に設定。fig.4
屋根裏を横切る部分やソーラーパネル等にも少し電波が乗っていますが、電流最大点からの距離が取れているため影響は僅かです。
以上のシミュレーションから、配線が屋根裏に出てきた根元部分にコア挿入すべきであることが判るでしょう。
しかし、残念ながら2017.11.20での作業では真逆の屋根裏を横切ってソーラーパネルに近い位置にコア挿入されてしまいました。
しかも、地線への対策はなされず無視されてしまっています。これをシミュレーションしてみました。fig.5
シミュレーション結果を見て判るとおり、あまり効果は得られていません。 地線に対策が取られていないことが大きいですが、2tが3個1tが3個では心許ありません。
実際の受信においてもノイズレベルは若干悪化しています。これはコア挿入により電流分布が悪い方向に変化したためと考えられます。
それでは、どのようにコア挿入するのが効果的なのか・・ と次のように考えてみました。
以上の条件でシミュレーションを実行しました。
コアの段数は10個。4ストリング+地線の5本に施工するため計50個必要です。
挿入間隔は、根元部分は約20cm、そこからソーラーパネル方向に漸増させ、端では約70cmと設定。
シミュレーションの結果から、屋根裏への引き込みポイントでノイズを阻止できているものと推測できます。fig.6
また、一点だけに挿入せず屋根裏の配線の全域にわたって挿入してあるためこの部分に励起される電流も抑止できています。
放射されるノイズの電界強度はどれほどのものなのでしょう。
ノイズ源宅の屋根から当方のアンテナを見上げる仰角は約2°なので、仰角2°方向への絶対利得で 2017.11.20作業以前(fig.2) 緑、 2017.11.20作業後(fig.5) 赤、改善案(fig.6) 青を比較してみます。fig.7(円グラフ)
2017.11.20作業後(fig.5) 赤は 作業前の緑よりも良くなっている方向もありますが悪化している方向もあります。
ちなみに、偶然の一致かもしれませんが、当方のアンテナはこの悪化部分の220°方向に位置しています。
また、改善案として示した青は ほぼ 10dB以上の改善が達成されています。
このグラフは水平/垂直偏波の合算値を示していますが、改善案の偏波成分は ほぼ垂直偏波成分のみであり、当方のアンテナは水平偏波であることから実際にはさらなる改善も期待できるでしょう。
以上のとおり、前述した改善案を実施することでノイズレベルは 10dB以上改善できるものと推測します。
ぜひ、再度ご検討いただき、パワコンノイズが上昇する3月下旬頃*8までに対策完了となるようお願い申し上げます。
ということで、またしても・・ To Be Continued...
もしかして 次回のタイトルは『太陽光発電ノイズ・征服』・・だったりして!?
*1 パネルにうっすらと積雪した程度ならまだしも、積雪深が大きければ当然発電できず、パワコンも動かないようだ。
*2 キュルキュルノイズで Rigの Sメータが しっかり振れている。
*3 ただし、前述の もう一つの要求については 梨のつぶて だ。
*4 隣のストリングを逆相にしてしまうと、かなりレベルが落ちてしまう。実際のパワコンは、出力側の位相制御は行っているだろうが さすがに直流入力端子に漏れ出すインバータの高調波の位相制御まではできないのだろう。実現すれば スゴイ特許になるだろうが。
*5 この大地アースへのラインにはコアを挿入しない方が良いのでは??
*6 もちろん、このアース線(地線)に給電点は設定していない。
*7 逆相成分もあるが レベルが違うので打ち消し合うことは無い。
*8 キュルキュルというパワコンのPWMノイズは 温度と日照の関係か 春秋にレベルが上昇するようだ。
大変ですね・・・ 諦めず頑張りましょう。
諦めません。なんとか年度内決着をはかりたいと・・