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[Radio] 続 太陽光発電ノイズ

2016年04月23日 17時 更新

太陽光発電ノイズについては、昨年11月の記事に書いた。その続報である。

実は、昨年の暮に一回目の対策作業が行われたのだが、その内容については当方に何の報告もなかった。単に調査をするということしか告げられていなかったのである。

調査当日*1のノイズの状況は次のとおり。

2015/12/24
09:00過 ▽△工務店 ◇□氏来訪。調査開始。ノイズ S4(50.237付近)。
09:21 キュルキュルノイズ停止 残留ノイズS2
09:27 ノイズON 変化無し
10:27 ノイズ停止 残留ノイズS1
10.49 ノイズON 変化無し
10:56 ノイズ停止 残留ノイズS1
11:09 ノイズON 変化無し
11:16 ノイズ停止 残留ノイズS1
12:00 ノイズON S4→S2に低減
12:58 ノイズ低減 S1
14時過 ノイズS1未満
14:13 ノイズ増加 S1~S1.5
15:10 急激なQRHでノイズを見失う
16:05 日没(16:20)が近づいてノイズ消失を確認(パワコンOFF?)

調査終了等の連絡は一切ない。S4→S1.5で 7dBほど改善したわけだが、これが何らかの対策の成果なのか まるで判らない状況である。

そこで、今年2月下旬、未だ報告がなされていない旨をWebサイト経由でクレームしたところ、3月1日になってパワコンメーカ作成の報告書(PDF)が設置業者経由でメイル転送されて来た。

パワコンメーカの結論と対策内容は ざっくり次のとおり。*2

  • アマチュア無線局近傍では、当社パワーコンディショナを使用した太陽光発電システムより発生される妨害電波は観測されなかった
  • パワーコンディショナ近傍では妨害電波は観測されたが、コアを追加することにより妨害電波が軽減されることが確認された
対策内容
PV*3入力:ファインメットFT-3KM (日立金属) 2T×2 ・・・4ストリング全てにそれぞれ挿入
AC出力:RFC-20 (北川工業) 1T×1
アース:MRFC-13 (北川工業) 1T×3

テクトロニクスのスペアナを持ち込んだようだ。しかし、アンテナが単なる電界プローブで地上高も5mまでしか上がらないようでは、近傍界ならまだしも マトモな測定ができるはずもない。

そこで、次のような反論をメイルした。

1.妨害を受けている当方や○○氏宅のアンテナ高は20m以上あり、太陽電池パネル設置者宅との間に障害物はないといってよいが、測定は地上高5mで実施されている。住宅地であり、周辺の家屋の高さは7m以上。5mでは、当然、設置者宅の太陽電池パネルは見えない。
28~50MHz帯では地表付近における減衰が大きく、測定用アンテナの高さは少なくとも信号源である太陽電池パネルの設置高以上とし、斜め上方での放射電界を測定しなければならない。
このように、測定環境に不備があるため「パワーコンディショナ運転中と停止中でノイズレベルの差は見られずパワーコンディショナ運転によるノイズの影響はない」と結論づけることは間違いである。

2.日立金属のカタログによれば、FT-3KMの28~50MHz帯におけるインピーダンスは、1ターンあたり約40Ωである。2ターンで4倍の160Ω、それを2個挿入して160×2=320Ω。一方、パワーコンディショナ~太陽電池パネル間の配線の、28~50MHz帯におけるコモンモードのインピーダンスは数百Ωと見積もることができる。仮に、これを300Ωとすると、阻止インピーダンスが320Ωでは、約3dBしか改善できない。当方では20dB以上の改善が必要と考えており、それを実現するためにはキロΩオーダーの阻止インピーダンスが必要である。つまり、フィルタの段数が少なすぎる。

以上のように、パワコン製造元が実施した測定・対策は不十分であるといわざるを得ない。しかしながら、対策当日の午前9時頃と作業終了後の15時頃では、当方の測定環境において、50MHz帯におけるノイズ強度が約7dB低下していることを確認できている。つまり、ある程度は対策の効果が出ていると考えられる。フィルタの段数を増やす等することで、もう20dB下げることは可能であると推測する。ぜひ、再度の対策をお願いする。

2日後、パワコン製造元から再度対策の連絡が入ったものの、降雪等悪天候で たびたび順延となり、ようやく4月16日実施ということで決定。
だが、前日までは雨で 当日も快晴は のぞめない雰囲気である。*4



当日は、パワコン製造元エンジニア氏に比較的簡単に確認してもらえるよう、当家玄関スペースにシャックからケーブル延長してバンドスコープ付きRIGを設置。

09時から開始。まず 対策前の状態でパワコンをOFF/ONし*5ノイズの状況をみる。当然のようにパワコンとノイズは同期し、ノイズ源 確定。

しかし、当日の天候は あまり良くなく、ノイズはかなり弱め。たまに日照回復するのだが、短時間で また曇ってしまう。この程度のノイズでクレームつけられたんかい・・と、先方は思ったかもしれない。(^^;)

で、いろいろあったが、結果的にノイズが止まることはなかった。

トータル的には、昨秋の状態に比べると改善はしている。先の記事の画像のようにバンドスコープでキュルキュルノイズの存在が判るということはなくなったし、ノイズ強度も S1程度に留まってはいる。*6

しかしながら、やはり微弱信号を追いかける身としては、ノイズの存在は了解度を低下させ交信の妨げになるし、弱くなったとはいえ あのキュルキュル音を聞き続けるのはかなりのストレスなのである。



この日の対策としては、ソーラーパネルへのライン4系統に コア8Tのコモンモード・チョークを挿入。ACライン、アースラインにもチョーク挿入。

ノーマル・モードのフィルタは入っているか質問・・これは、いちおう各種周波数帯(~1GHz)用に複数入っているとのこと。*7

さて、コアに8Tならば、約40Ω×8×8で、約2500Ωというハイ・インピーダンスとなるが、なぜこれで止まらないのか?
もしかして、線間容量による通り抜けとか・・ チョークの自己共振周波数が50MHzより低ければ*8、インピーダンスは期待値に届かない。8Tと巻数を増やすより、段数を増やした方が良かったのではないか。*9

パワコン製造元側も この日は万策尽き、再検討するということで作業終了となった。


To Be Continued ... 新・太陽光発電ノイズ...


*1 当日の天候は晴れ。当然パワコンも全開で(?)キュルキュルノイズも盛大かつ安定に出ていた。

*2 一部編集。

*3 PV ・・Photovoltaic のことと思われる。いわゆる太陽電池パネルのこと。

*4 快晴で日照時間が長ければ、キュルキュルノイズは強力かつ安定に出る。曇天では ノイズ検出が困難なことも。ただし雨天でも十分ノイズ確認できることがあり、まったく この手のノイズは挙動不審である。

*5 パワコン側のスタッフとケータイで連絡。

*6 あくまでも、4月16日以後 一週間程度の観測の中での話。

*7 電気用品安全法やVCCIの縛りがあるもよう。

*8 巻線は相当太く、線間容量かなりデカそうだ。

*9 物理的な体積が大きくなってしまうので、パワコンの筐体に収まりきらないという問題もあるが・・

Tada/JA7KPI : 2016年04月22日(金)

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