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[Radio] 8エレ八木宇田の再設計

2006年09月07日 10時 更新

以前、CD社の50MHz用8エレ八木宇田アンテナの解析を試みたことがあった。そのときのことは一部別ページに書いたのだけれど、もうだいぶ昔のことだし、再度やってみようかという気になったのである。

ようするに、現用中の改造8エレは当初の設計どおり、いや、自分の思惑どおりの性能を発揮できているのかということなわけだ。

さらにいえば、アンテナ解析ソフトウエアによる演算結果はどこまで信用できるのか、また、実アンテナの解析には数値入力する必要があるが、スキャナでデジタイズするわけにもいかず、とどのつまりソフトウエアのフォーマットに合わせて入力しなければならない。しかし、単純にエレメントの半径と長さを入力しただけでは実アンテナのデータをPC上に再現できないのである。

まあ、この問題の解はしばらく出ないだろうから、とりあえず先に進もう。

(ワイヤによるDPとか逆Vといった比較的単純な構造のアンテナで、波長が長く、地上高がある程度高い場合は、それなりの演算結果を得ることは可能なようだ。念のため)


さて、実際のアンテナはCD社の8エレを改造するわけで、マッチングセクションもそのまま流用。このため、モトのマッチングセクションの特性を知る必要がある。

CD社の6m用八木(旧版)にはアルミの円筒ケースのバランが使用されており、これをバラしてみると、50Ωの同軸ケーブルで作った Uバランになっているのはよく知られている。Uバランは、4:1 のインピーダンス変換機能がある。つまり、このバランは 200Ω→50Ωの変換役も兼ねている。

CL6DXZ 旧バージョン

また、ラジエータは、半波長よりも短くなっていて、30cm程度のヘアピンが付いている(現市販バージョンはFD型式)。問題は、このヘアピンマッチにより、何Ωを200Ωに変換しているのか・・・である。

昔、YSIM で計算させてみたときは、12.333-j79.715Ωという計算結果であった。しかし、YSIMはテーパーがかかったエレメントの計算ができないため、エレメント径は端から端まで同一として計算させたものだ。実際のアンテナはブーム径の影響、複数パイプの継ぎ足し、スウェージングなどがあり、実際のインピーダンスを知るためには、残念ながらYSIMは少し役不足であるといわざるを得ない。

そこで、MMANAを使ってCD社8エレを計算させてみた。ラジエータ以外のエレメントは、5分割として入力。結果は 16.595-j87.668Ωとなった。

しかし、本当にそうなのか。ここは、実際のヘアピンとバラン及びRCを使ってアンテナアナライザでSWRを見ながらSWR最小となるRとCを特定することとしてみる。Rには小型の2kΩの半固定ボリウム、Cにはセラミックコンデンサを使った。ボリウムとコンデンサを直列接続し、コンデンサを交換しつつボリウムを回してSWR最小のRを割り出すという方法である。

結果は、C=36pFのときがSWR最小となり、そのときのRは19.5Ω。つまり、ヘアピンとUバランは 19.5-j88Ω→200Ω→50Ω の変換をおこなっているということになる (※ 続・5el の修整 も 参考にしてね)。なお、バランの方は、あらかじめ200Ωを接続してSWRチェックをおこなってみたが、十分広帯域であった。

(同じくCD社の7エレに使われているマッチングセクションでも測定してみた。ヘアピン長がほんの少し違い、22-j93Ωと出た)

MMANAの計算結果とは、純抵抗成分で3Ωほどの差異が出ているが、ここは実験値の方を採用することにした。


次に、MMANAの最適化機能を使っての新8エレの設計に入る。MMANAのオプション→環境設定→SWR計算基準Z には、実験で得られた 19.5-j88Ωを入力しておく。

元データとしては、現用の8エレデータではなく、前述のYSIMのページに掲載した K1FO八木をネタとしたKPI689Cのデータをモデファイしたものを使った。

当初、ゲインを高めにし、F/B比は重視しない設定で最適化を走らせてみたのだが、第3ディレクタがどんどん短くなっていき、ついには長さが1/4波長を切ってしまった。つまり、8エレだったものが7エレ化してしまったのである。最適化結果は、さすがにゲインは高めになったものの、周波数特性的には帯域が極端に狭いものとなってしまった。

F/B比をあまり重視しないように設定したのは、コンテストでの運用を考慮したためである。つまり、CQ連発してるときにバックにもある程度は飛ばしたい・・・ということなのだが、どうもうまくいかなかったようだ。

これでは、高い実製作精度も要求されるし、周囲の環境(大地、立ち木の状況、地上高等)が変化すれば、目的周波数におけるSWRやゲインが大きく変化してしまう可能性が高い。ようするに使いにくいアンテナとなってしまう虞れがある。この8エレ・・いや、7エレは却下だ。

KPI689K2

そこで、今度はF/B比もある程度重視した設定で再度最適化をおこなった。結果は満足いくものだったが、残念ながらエレメント(また第3ディレクタ)の位置が ブームの継ぎ目 と重なってしまったのである。上げっぱなしの固定局用アンテナであれば、これでもいいのだが、移動用のアンテナとしてはその都度組み立て〜分解をおこなう必要があるため、ブームの継ぎ目にエレメント・ブラケットが来ることは避けたいわけだ。

しかたないので、第3ディレクタの位置をブームの継ぎ目から少しだけズラして固定してしまう(最適化の変数から除く)ことにした。こうしてできたのが KPI689K2 である。

エレメントの位置と長さが決まれば、次の段階はエレメント・ブラケットの位置移動と再固定、エレメント長の変更である。こちらはもう、実際のアルミパイプを粛々といじるしかない。


VSWR-Freq.

というわけで、やっと今日、雨上がりの米代川堤防で実際に組み上げてみた。まず、エレメントの水平出しをおこない、次に3mちょっとまで上げ、アンテナアナライザ(BR210)でSWRを測定してみた。できるだけ高くして実際の運用状態に近い形で測定したかったが、なぜか風が相当強く、低地上高でやるしかなかった。このときのSWRはグラフの赤で示している。黒は同一地上高でのMMANAの計算結果だ。

13.4mの8D2V経由で接続しているので、このケーブルでの損失のため、実測SWRは若干良く測定されているはずだ。で、その測定値は、低い周波数ではほぼ計算値と一致しているのだが、高い方では傾向としては一緒という感じがするものの、実はだいぶ違う。(^^;)

しかし、これくらい近い値であれば「御の字」という気もする。あとは、ビームパタン(特にバック)もある程度は測定したかったが、再び雨が降りそうだったため断念。とにかく、これでしばらく使ってみることにした。

ところで、今回のアンテナは、第4〜第6ディレクタを取り去る(ブームを半分にする)と、5エレとしても使用可能(計算ではフロントゲインで -2dB)のはずだ。今回の再設計には、実は5エレ化というウラ設定もあったのである。

Tada/JA7KPI : 2005年10月29日(土)
コメント(2) [コメントを投稿する]
JH7VTE 2005年10月30日(日) 23時

こんばんは、VTEです。8エレ改造について興味深く読ませていただきました。<br>オリジナルの特性は、このタイプの後期バージョンと仮定して50.0〜51.0まである程度の性能が出ているものかな?と記憶しています。うちの6エレもその時期のものなのですが、Gainに関しては10年近くこれで妥協しています。IKU氏オリジナルのブーム長9m、7エレ八木と比較したときがあって、確かに7エレのほうがぎりぎりの信号を聞いている状況では違うかな〜と感じますね。<br>ただ今年みたいに26回ほど移動していると、アンテナの軽量化のほうに興味がいっちゃって、きょうはホームセンターで7ミリと6ミリのアルミパイプを物色してきました。設営、撤収時になるべく楽したいのと、取り回しを軽くしたいのが目的です。<br>JQ1BVI局のサイトにある5エレも良さげですね。オフシーズンは来春に向けてこちらも何パターンか検討してみようかなと考えています。

JA7KPI 2005年11月01日(火) 02時

とりあえず8エレでやってみたんですが、ゲインは欲しいものの、やはり重さとかさばるのには閉口してしまいます。<br>5エレ程度なら楽なんですが、北東北からでは大票田の関東まで飛ばさなければならず、<br>やはりゲインを重視せざるを得ません。<br>ブームを短くした7エレあたりが移動用としてはいいのかなと思ってます。8エレでは、ちょっと移動してみようという気にはなかなかならないので・・・(とり回しと重さには、かなり慣れてしまったのですが、やはり安全性に問題がある・・・と ^^;)<br>まあ、来シーズンまでいろいろ試行錯誤してみます。


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