そこで、ブーム長,エレメント スペーシング をできるだけ変えず、 エレメント長のみ変化させて 利得対周波数特性をなんとか拡げられないかと YSIM に登場願うことにした。
(なお、ここで使用したのは WINDOWS 版ではなく DOS 版の YSIM で、使用マシンは 80286+287 の 今は亡き PC9801VX21 である)
結果としては、手作業でのデータ変更 / 計算 / 評価の繰り返しなので、だいぶ時間がかかったが、なんとかはなった。
スペーシング を変えなかったのは、給電点インピーダンスをあまり変化させたくなかった (オリジナルの給電部をそのまま使いたい) からなのだが、それでも若干の変化はあった。 これはしかたのないところだろう。
肝心の利得は、下の表にあるように 51MHz 以上での落ち込みが改善され、しかも全体的にも UP している。
どうせならと、今度は JM1MCF 作の OptimiZm* というソフトに K1FO 八木をベースにしたデータをぶち込み、 YSIM で修正するということをやってみた。 OptimiZm は本来、十数 el 以上の八木の自動最適化をめざしたソフトだが、なんとか 8el でも動いてくれた。こちらの結果も下の表を参照願いたい。 "KPI689C"
というのが最終的におちついたデータである。
NAME | KPI689C | CD 8el.Mod. | CD 8el.Org. | |||
---|---|---|---|---|---|---|
Element diameter 10mm , 5mm | ||||||
Loc. | Length | Loc. | Length | Loc. | Length | |
REF | 0 | 300+1197 | 0 | 300+1194 | 0 | 300+1200 |
RA | 970 | 1260+0 | 1220 | 1260+0 | 1220 | 1260+0 |
D1 | 1700 | 300+1070 | 2000 | 300+1100 | 2000 | 300+1100 |
D2 | 2799 | 300+1058 | 3130 | 300+1053 | 3130 | 300+1060 |
D3 | 4226 | 300+1046 | 4525 | 300+1035 | 4530 | 300+1040 |
D4 | 5808 | 300+1036 | 6010 | 300+1026 | 6000 | 300+1030 |
D5 | 7478 | 300+1025 | 7596 | 300+1020 | 7560 | 300+1065 |
D6 | 9200 | 300+1015 | 9180 | 300+1017 | 9180 | 300+1020 |
Imp.(50.2) | 12.817-j86.364 | 8.551-j86.634 | 12.333-j79.715 | |||
Gain(dBd) 50.0 | 10.867 | 10.799 | 10.651 | |||
50.2 | 10.891 | 10.765 | 10.435 | |||
50.6 | 10.734 | 10.421 | 9.858 | |||
51.2 | 9.952 | 9.506 | 6.928 |
というわけで、オリジナル / 改よりも FB なのができてしまった。
なお、念のため記しておくが、現在市販されている C社のアンテナはこの計算を行った当時とは エレメントデータ が異なっている。 なんでも 某アンテナシミュレーション・ソフト で最適化したということだ。 (^^;) よいことである。
また、 YSIM は現在「 YSIM for WINDOWS 」として JA1QPY の 数理設計研究所 で配布されている。
CQ出版社 刊 「八木アンテナを作ろう」にも添付されている ので、詳しくは本を買うかリンクを辿ってみてほしい。
JA1QPY 玉置氏 は YSIM のバージョンアップに着手しているようだが、多忙のため作業が進まないと聞いている。 ぜひ「励ましのお手紙」を書こう!・・ いや・・黙って「八木アンテナを作ろう」を買っていただきたい。
●このページは、1996年に書いたもので、YSIMによる計算はそれ以前におこなったものである。
CD社の8エレについては、最近(2005年)のソフトウエアを使用し、エレメント径、ブーム径等の影響を含めた計算をすると、このページの表の値よりもかなりよい計算結果が出力されていることを付記しておく。
また、インピーダンスは、18-j90Ω程度という計算結果となっている。
●もっとも、現在市販されているCD社の8エレは2回目のバージョンUPが施され、フォールデドDPの輻射器になるなど、このページで取り上げた8エレとは完全に別物になっている。
●OptimiZm はエレメント長とエレメントスペースのカーブに双曲線関数を適用していた。全エレメント長、全スペースを双曲線にフィッティングさせ、一気にパラメータを変えて計算させることで、最適化速度と最適化結果の向上を狙ったものである。実際、OptimiZm による計算結果は非常に優れたアンテナになっていた。
MMANA にも最適化機能はあるが、OptimiZmのように八木宇田アンテナの設計には特化していないため、時として思惑から外れたデザインとなってしまうことがある。
●YSIMの作者である JA1QPY 玉置氏は、2013年3月9日ご逝去された。数理設計研究所は存続しているが、WebサイトにYSIMのページはみつからないようだ。