FT726


FT726 FT726といえば、今は亡き(おぃ)八重洲無線(YAESU)のVUHFマルチモード・トライバンダ(サテライト・ユニットも内蔵)である。

リレーがイカれるのが怖くて、スキャンもやらせられないし(もっとも、遅くて話にならない)消費電力はでかい。そんなにいいRIGだとは思わないけど、いいところももちろんある。
FMモードでは検波段の性能もかなりモノをいうわけだが、FT726はFM受信の了解度が群を抜いている。FM検波部がICではなく、完全ディスクリートで組まれていることも一因なのではないか。

以下は、そんなFT726の故障/修理の記録である。

なお、パネルには「ALL MODE」と銘打たれているけれど、50MHzにQRVできるRIGで、AMモードが無いのに「ALL」と形容するのはいかがなものか・・・(よくあるハナシ ^_^;)

その1 TC4024BP

FT726の調子が悪くなった。
症状は、電源ON後、数分で6mの送・受信とも不能になるというもので、原因を追及した結果、どうも6mユニットのPLL部でマトモな周波数を出力していないということが判ったのである。

回路図をたよりに、さらに調査してみた。
したっけ、6.4MHzを1/64して100kHzにするらしいMN4024BというICが怪しいというところまで判ってきた。
電源ON後、数分でこのICからの100kHzの出力が停止するのである。
しかし、回路図では、このICはMB84024Bとして記載されている。

ジャンク箱をかき回すと、東芝の TC4024BPというICがなぜか1個出てきたのだが、これって、もしかしてMN4024BやMB84024Bと互換が効くのか??
某BBSで助け船を要請したところ、「みーーんな同じ物です」というお答えが返ってきた。

ICの交換が終わり、電源ON後10分経過。異状はない。どうやら戦線復帰できそうである。

その2 S-AU/4

FT726の430MHzバンドの終段である東芝のハイブリッド・パワーモジュール(高周波高出力混成集積回路) S-AU/4 が死んだ。
モジュールの中のドライバ(2ステージの前段TR)は生きているようだが、最終段のTRが動作していない。

ネットを検索してみたが、どうも売ってるお店は無いみたいだし、互換品もみつからない。
ジャンク箱ををかき回すと、三菱のM57752がなぜか出て来た。(うちのジャンク箱は四次元ポケットか!?)
S-AU/4 and M57752 規格を調べてみると、FM10W用である。しかし、S-AU/4 だってもともとはFM用なのだ。
ピン位置と大きさ、電力利得も同じである。なんぼFM用だといっても、実はAB級動作してんじゃねーか?
で、なんとかなるんじゃないかと交換してみることにした。

S-AU/4の場合、バイアスの制御端子があり、これをうまく使ってSSBにも対応していたようだ。
M57752の方は、単なるVcc端子が3ステージ分出ているだけらしいが、SSBの場合は電圧は高い方がいいだろうと考え、バイアス用の電源供給ピンは浮かし、モジュールの3番ピンにも13.8Vをかけた。

その結果、FMモードで 8〜9W 出た。3番ピンの電圧をバイアス用に使っていた8〜9Vにすると、5W程度しか出ない。

M57752のSSBでの音質は、クルマのFT100でモニタリングしてみたが、いやはや・・聞かれたもんじゃないのである。はっきりいって、音になっていない。
やっぱし、AB級なんて高級方式は使ってないのね。あたりまえか・・・
まあ、FMとCWができればいいか・・とも思ったのだが、乗りかかった船、三菱の 430MHz 25W SSB 用の M57745と交換するという誘惑に勝てなくなってしまったのである。こいつなら、まだ売っている。

maintenance for ft726

しかし、50と144の終段は三菱のSSB対応のモジュールを使っているのに、なんで430だけ東芝のFM用を使っているのだろう??
単に安かっただけかもしれないな。M57745は高いぞー。

M57745を金曜日にInet経由で若松通商に発注。火曜日着。(代引)
交換してみたところ、なんと 30W 出た。内蔵電源の容量不足で唸るけど。
放熱も心配だし、もったいないような気もしたが、出力は15Wに抑える。
さすがSSB用のモジュールであり、音はまずまず。M57752は完全にC級増幅だったんだろうなぁ。
(ちなみに、50と144では最大で18W程度出るが、こちらも15W未満に抑えてある)

ところで、M57745はS-AU/4とピンの互換性がない。2番ピンと3番ピンの機能が逆である。
このため、そのまま実装することはできず、ピンをクロスさせる必要があった。

(実は、原因追及のため430MHzユニットをバラしてからM57752を試してみるまでには数年のブランクがある。その間、430MHzユニットは内部むき出しのまま放置されていたが、モジュールを交換して電源を入れてみたら、終段部分に電圧がかからなかった。
基板上の小型リレーの接点が腐食して接触不良になっていたのである。紙に接点復活剤を浸してシコシコ接点を磨いてやったら、やっと機嫌を直してくれた)

その3 RF増幅用FET

50MHzの受信がダメになった。このRF増幅は、GaAs FETに改造している。
GaAs FETは、3〜5Vの電圧で動作するように作られており、MOS FET のように8〜12Vもかけたら壊れる可能性が高い。もちろん、電圧はちゃんと落としているつもりだったのだが、電源部をチェックしてみたら、通常13.8Vのところ、15V出ていた。GaAs FET が何回も死んだのはこのせいか?? 可能性低いけど。

いちおう、13.8Vに戻してから、10年以上前に作った144MHz用のプリアンプから別の GaAs FET を外してくっつけたら、復活した。これって、3SK97かな、3SK112かな? 型番表示が無いんで判らない。
ま、いいでしょ。福島のビーコンもよく聞こえているし。

今回はやらなかったけど、GaAs FET のパラレルRFアンプなんてのもよくやってる。パラレル定番の2SK125だけじゃなく、GaAs FET もパラにするといいことあるよ。あ、AGCは外しちゃってます。

その4 再び送受不能

50MHzで再び送受信不能になってしまった。今回は電源ON後のタイムラグ無しである。
送受信不能だから、局発関係が怪しいわけだ。
このFT726のシンセサイザの構成はかなり込み入っていて、できることなら触りたくはないのだが、RFプローブと周波数カウンタで原因を追ってみた。

いちおう、局発の信号は出てきている。しかし、周波数がダメダメである。
その1の原因だったTC4024BPの1/64分周出力(100kHz)は、マトモ。VCOのコアを少し回しても局発周波数は一定なので、PLLはロックしている。
となると、プログラマブルデバイダあたりが怪しいことになるが、TC9122Pからはちゃんと100KHzが出てきているので、その前が怪しいと。

いわゆるデジタルICを使った回路の知識はほとんどなく、途方に暮れてしまったのだが、気を取り直して基板をよーく見てみると、コネクタ用ピンのハンダづけ部分にクラックが入り、電気的に浮いているようなのである。このピンは回路図では「clock」と表示されている。

あーーっ!! これだ、これに違いないっ!!

コテをあてて再度ハンダを流してみると、ビンゴ。あっけなく復活した。
何度もバラしているうちに、コネクタのピンに力が加わり、ハンダのクラックに至ったものと思われる。

で、FT726でバンバンQRVして・・いるかといえば、ぜんぜん出てないわけで、QSLカードに書いてある英文のとおりの信念・・・負け惜しみというか、言い訳というか・・・(^^;)

その5 430で送信不能

430MHz帯で送信不能になってしまった。PTTスイッチを押すと送信状態にはなるものの、出力が出ない。受信はいちおうできるみたい。

70cmユニットを摘出してみると、送受切替のリレーが動作していない。
送受切り替えのための信号(N.TX と S.TX)はマトモなようだ。
で、回路図を追って電圧チェックしていくと、Q12がONになりっぱなしであることがわかった。Q12(2SC945P)のベースに接続されている33KΩを試しに切ってみたら、正常に送信できるようになった。

しかし、これで「めでたしめでたし」にはならないのである。・・・てことは、Q12以前に何らかの問題があるということか。で、RIG付属の「調整の手びき」を見てみたら、Q12 は PLL Unlock Switchということになっている。
そうか、PLLがロックしてないときは、位相比較器がUnlock信号を出して送信できないようにしてるわけね。でも・・・今はUnlock状態なのにちゃんと送受信できてるぞ!!?? 送受信周波数も合ってるし・・・

結局、「調整の手びき」にしたがってPLLの調整をおこなったところ、正常動作に回復した。VCOのトリマ(TC6003)が接触不良気味になっていたらしく、TP6006の電圧が4Vどころか1Vも出ていなかったのだった。

しかし、いまいち納得できないんだけど・・・ま、いっか。びみょーなレヴェルだったということで(^^;)。

その6 再調整

このRIGは、50MHzではかなり使い込んでいたものの、144や430MHzでは、あまり使ってはいなかった。というか、数年前までは、バラしたまま10年くらい放置されていた。

しかし、2006年から衛星通信をやるようになって、がぜん使用頻度が上がったのである。衛星で使ってみた感想は、ひとこと「耳が悪い」であった(^^;)。とにかく、感度がどうのこうのいう前に、ゲインがまず足りない。

そこで、「調整の手びき」にしたがって、各ユニットを再調整してみた。430ユニットでは、「手びき」のとおりに調整すると、435MHzでゲイン過剰になってしまうという問題があり、RF増幅段のトリマは適当に周波数を散らして調整した。

結果、ゲインはかなりアップし、音量やSメータの振れは改善された。衛星通信でも本当に(^^;)S=9までメータが振れるようになったのである。もちろん、感度とSメータの振れにはなんの関係もないわけだが、とりあえず、多少は感度もアップしたものと思われる。やはり、10年も放置しておくとダメですな。たまに電源くらい入れてやらないと・・・
(衛星始める前までは、電源投入直後はVFOダイヤル回しても周波数が動かないなどという不安定さをかかえていたが、衛星でよく使うようになってから、この不具合はなくなった。やはり使い続けている機械は安定なのである)

なお、再調整したといっても、やはり衛星通信には感度不足であることは変わらない。現在、145MHzではなんとかプリアンプ無しで使っているが、435MHzではプリアンプ無しだとつらい。145でもプリアンプはあった方が良さそうである。

あと、このFT726はノイズブランカの効きがあまり良くない。ノイズアンプ段の出力コイルの調整は、実際にノイズを聞きながらノイズが最小になるポイントに合わせるのがよいようだ。単純にレベルだけでコアを調節してしまうとノイズ最小ポイントにはならないような気がしている。これは、波形の問題かもしれない。スイッチング・ダイオードを変えてみるのもいいか・・・・ ※FT-726のノイズブランカは、スイッチング・ダイオードを使っていないので訂正。2SC1815をスイッチにして、IFアンプのFETの第2ゲート電圧をドロップさせてノイズ時のゲインを殺しているようである。

その7 電源部改造+再々調整

FT726電源部 電解コン追加2007年11月現在も現役のFT726。衛星通信/地上波通信もほぼ順調である。(ちなみに、買ったのは1983年だから、そろそろ四半世紀)
以前、30W出たが電源が唸る(ハム音発生)・・・と書いた件については、電源部に電解コンデンサを追加したことで、15W→20WにQROしても唸らなくなった。でも、30Wまでは保たない(^^;)。
今回は、ジャンク箱から適当な値(1000〜2000μF)のものを既存のコンデンサにパラレルにハンダづけしたのだが、デカい値の新品コンデンサに交換するのがスマートであろう。

再々調整として、周波数の調整もおこなってみた。これで50/144での周波数ズレを100Hz程度にまで追い込んだ。しかし430では追い込み切れておらず、まだ400Hz程度ズッている。
その他、念入りに調整をおこなったが、ありがたいのが八重洲無線謹製の「調整の手びき」である。最近の無線機には、「調整の手びき」どころか回路図さえ付いてこないものがあるわけだが、うーーん、ムカシはヨカッタなァ。(といっても、ネットを探れば、回路図付きのサービスマニュアルの類がダウンロードできてしまうのだけれど。 ^^;)

FT-726の記事は、bLOGにもあります。

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