以前も書いたのだが、夕方に1.9MHz専門で移動運用しても、聞いてる局が少ないと見えてなかなか交信局数が増えない。
そこで考えたのが、3.5MHzと抱き合わせのQRVである。3.5で集客して1.9へ降りることにより、1.9での局数を増やせるのではなかろうか。
それで、1.9/3.5のデュアルバンドアンテナを作ろう・・ということになったのだが、世間の意表を突くアンテナがどうにもできないのである。(^^;)
右の写真のとおり、コイルのボビンは直径3.8cmのよくあるタイプの塩ビのパイプ。コイル線径は1mm。ほぼ密巻で66回。*2
共振回路のコンデンサとして、1.5C-2V*3を使っている。このケーブル長を切りつめることで共振周波数を調節する。*4
なお、66回と少なめの巻数にしたのは、主目的がデュアルバンド化であり、短縮率の向上ではないからだ。巻数を増やせば、それに比例して1.9MHzにおける性能は低下すると考えられる。
共振周波数の調節は、クラニシのアナライザBR-210にワンターン・コイルを装着し、写真のようにワンターンの中にトラップコイルを入れておこなった。
なお、BR-210はSWRではなく、インピーダンス・モード(IMP)にする。インピーダンス最大の周波数が阻止周波数だ*5。写真では3.512MHzとなっている。
エレメント・ワイヤは、ホームセンタで入手した1.2mmφの裸銅線*6だ。
あらかじめ MMANA でデータを作り、NEC2 for MMANA で計算させてだいたいのワイヤ長を割り出しておいたのだが、3.5MHzでの長さはほぼシミュレーションによる計算どおりで、トラップを接続してもSWRの変化はきわめてわずかであった。
製作当初、トラップの後の1.9MHz用のワイヤ長は計算値から大きく外れてしまっていた。しかし、この原因についてはトラップコイルの直径を勘違い*7したためと後日判明した。
10月25日午後、能代港(PN90XE)に移動してワイヤ長を調節。前述のとおり3.5MHz部分は早々と確定したのだが、1.9MHz部分が計算値とズレていたためなかなか終わらず、しまいにはワイヤを切りすぎてしまうという体たらく。
けっきょく25日は作業完了できないまま3.5で41局、1.9で36局とQSOできたものの、1.9ではSWR>3の状態で、ATUのお世話になっている。
久々に日没後もQRVしたのだが、撤収時に雨に降られ、びしょ濡れに。(T_T)
翌10月26日午後は、南秋田郡井川町(JCG#04007B QM09BV)へ。以前も来た赤沢山だ。
ここで3.5MHzエレメント長の微調整と1.9MHzの方の再挑戦をおこなった。
3.5MHzはきわめて安定しているのだが、1.9MHzの方はエレメント端の地上高の変化でもSWRがかなり変化する。その変化の度合いはやはり今まで使ってきたフルサイズよりも大きいといえよう。
このため、SWRはいちおう1.5程度には落ち着いたものの、最終的なエレメント長は未確定のままだ。
ある程度調節できたところで雨雲が空一面を覆い、土砂降りとなってしまったせいもある。
このあと、再び3.5/1.9でQRVし、3.5で58局、1.9で33局とQSO。
撤収時には、なんとか雨もあがってくれたので助かった。
また、トラップが雨に濡れて使い物にならなくなるのではとビクビクしていたのだが、確かに多少の変化はあったものの、大きな影響はなく、ATUも使わずに済んだ。
追記:
遅くなってしまったが、このアンテナの実寸法を測ってみた。下図*8のとおりで、トラップまでの3.5MHz逆V部分が20.01mと19.95m、トラップ以降が6.565mと6.475m*9という非対称構造になってしまっているが、作りがイイカゲンなだけで他意はない。
また、下に NEC2 for MMANAのシミュレーションによるSWRカーブを示すが、3.5MHzでは、偶然にも(?)実際にSWRアナライザ(BR-210)で測定した値と完全に一致した。
1.9MHzでは、アンテナの設置状況によってSWRがバラつくことが多いのだが、SWR最小の周波数はさておき、その曲線はシミュレーションにかなり近い値を示していた。
なお、エレメント・ワイヤにテンションを掛けてピンと張ると、エレメント端の地上高が上がるせいか、SWR最小周波数(≒共振周波数)も上昇する傾向にある。これは、3.5MHzよりも1.9MHzにおいて顕著だ。
ビームパタンやゲインについては、とりあえずシミュレーション値を信じるしかないが、1.9MHzにおいては、フルサイズ逆V に比して真上方向へのゲインで約2dB、打ち上げ角30度方向でも約1dB負けるようだ。
このシミュレーション値は、 NEC2 for MMANA で計算させたもの。低地上高(対波長レベル)では、本家 MMANA の計算結果は
給電点インピーダンス、ゲインともに誤差が大きくなってしまうので注意が必要だ。この件については、1.9MHz逆Vについてのページも参照していただきたい。
*1 わりとカンタンに自分に掛けた縛りを解くKPIなのであった。(^^;)
*2 コイルは2液型のエポキシ接着剤で軽く固定。巻線はポリエステル線。
*3 コイルボビンの上にちょこっと出てるのが1.5C-2V。
*4 切りつめるといっても、数十cmなので、コイルボビンの中でとぐろを巻かせてる。ロック・タイで数か所固定。
*5 測定インピーダンス値*巻数の自乗=並列共振時インピーダンス=130kΩでいいのか? てことはトラップのQは100未満?(^^;)。
*6 1.2mmφでは、細くて、すぐ切れそうな気がして恐い。裸銅線なら、やはり1.6φ以上の線材がいいかも。
*7 38mmを35mmとして計算してしまった。
*8 図では、○が給電点。×がトラップの位置。
*9 本寸法はエレメントが1.2mmφ裸銅線の場合。被覆電線を使うと被覆の誘電率が効いてもっと短くなるハズ。