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[Radio] Laid down Vee

2008年01月03日 20時 更新

低軌道衛星通信用としてAWXアンテナを使い、早11か月。
このAWXは元々は双指向性だ。しかし、仰角を付け空を向けているため、指向性のバランスが崩れ、実質、単一指向性のアンテナとしての使い方になってしまっている。

で、あるならば、AWXである必要はないのでは? 受風面積もデカいし、4本あるエレメントを2本にしちまっても使い方的には変わらんだろう。

ということで、AWXから Vビーム*1モドキなアンテナに変更してみたのである。

Laid down Vee, a kind of V-beam

なお、このアンテナ、145/435MHz帯ではとても「Vビーム」といえるほどのビームは出ないので、勝手に「Laid down Vee (横たわったV*2)」と呼称することとした。

形状は、右の写真のとおり。AWXから不要になったエレメント2本を撤去し、残りの2本の角度を90度から35度に変更。これで風にはかなり強くなった。なお、エレメント長は13mm伸びて1540mm。

なお、マウント板も安売りのプラスティック製マナ板に変更。*3エレメント材も10mm角パイプから12mm角パイプに変更した。*4

LDV 給電点付近

左はマウント板と給電部。同軸ケーブル*5を後から引き出すかどうかは迷ったが、けっきょくこういう形となった。まあ、ド真ん中は平衡してるはずなのであまり影響ない*6とは思う。でも、やはり後からにした方が良かったかも。

それよりも気になるのが2つのUボルトである。やはり、エレメントに近すぎるような気もする。ケーブルもUボルトも後に回してしまった方が良かったのかも。・・・しかし、その場合重量バランスがなぁ・・・*7

LDV Beam 435MHzLDV SWR 435MHz

LDV Beam 145MHzLDV SWR 145MHz

LDV 逆側から。いい雲ですなぁ。

ビームパタン(のシミュレーション結果)とSWR特性は上の図のとおり。今回は、初めから衛星通信を考慮。仰角を付けなくても、ある程度は宇宙に電波が飛んでいくように設計されている。水平方向の指向性もあまりシャープではないので、衛星のだいたいの方向に向けるだけ。*8

ちなみに、水平方向のゲインだけを考えて最適化した場合、もう少しゲインアップが可能なものの、上方への放射はかなり制限されてしまう。また、そのときのエレメント頂角は、こんなに鋭角にはならない。

また、MMANAでの仰角を20度をつけてのシミュレーションでは、145MHzではあまり変わり映えせず。435MHzでは20度以上の打ち上げ角で若干改善されるものの、AWXほどではなかったため、実設置においても仰角は付けていない

SWR対周波数特性については、赤が実測値。シミュレーションと傾向が異なっている。マウントやケーブル引き回しの影響があるのかもしれないが、145/435の両バンドとも、特に悪いという特性でもない*9し、今回は詳しい追求はしていない。

で、実際に使ってみてどうなのかというと、自分としては「おぉ、AWXよりも使えるじゃん」・・・という感じ。もちろん、設計上はいくらか地上波での運用も考えてはいるけれど、いまのところ衛星でしか使っていない。*10

最近試験的に中継器ONになっているFO29はUP145/DOWN435だが、VO52だけではなく、このFO29経由の交信も特に問題なくできている*11ため、仰角付きAWXと同等、あるいはそれ以上の性能ではないかと自画自賛。(^_^;)


ところで、本アンテナは、実は当初トライバンド・アンテナとして開発された。もちろん、145/435/1200MHz用である。

それが、なぜ挫折するに至ったか・・・

下の図を見ていただきたい。MMANAによるシミュレーション段階での1200MHzでの特性である。この周波数帯まで上がると、完全にVビームとしての動作になっている。SWRもなんとか使える・・・ハズだった。

LDV Beam 1200MHzLDV SWR 1200MHz

しかし、SWRを実測したところ、バンドの下端(1260MHz)で3を下回るものの、肝心の1295MHzあたりでは3を大きく超えてしまったのである。こういう状況になったときは、インピーダンスの実数部が「高すぎる」または「低すぎる」可能性が高い。

そこで、目に付いたのがマウントに使用しているUボルトだ。このボルト、長さを測ってみると、あろうことか1295MHzにおける1/2波長にきわめて近い12.5cmなのだ。このUボルト2本をシミュレーションのデータに追加し、計算してみると、案の定、インピーダンスは1/2程度に低下し、SWRは大きく悪化。

対策失敗

そこで、左の如く、Uボルトをシャントしてやれば改善されるのではないかと考え、やってみたら、シミュレーションでも実測でもSWRはさらに悪化した。ぐわ、こ・これは、いかん・・・・けっきょく、Uボルトは元どおりに。

Uボルトのデータを追加したシミュレーション結果も、実測とはまだかなりの開きがあるため、まだ足りない要素があるものと思われるが、それがなんだかわからない。*12

うーむ、やはり腕木役の鉄パイプやらクロスマウントも両エレメントの中間にそれなりの大きさでもって、かつ至近距離に位置しているわけだから、その影響か・・・エレメント以外に金属を使わなければいいのだろうけれどそいつはちょっと無理。

というわけなのだが、1200MHzについては潔くあきらめることにした。なぜって、まず固定シャックからの交信なんてほとんど可能性ゼロで、モティヴェイション*13ぜんぜん上がらないんだもの。(^^;)

トライバンド化については、どなたか、代わりに挑戦してみてください*14。よろしくね。

(問題解決への糸口?→ Vの字の中、給電点付近に位置する金属は、給電点に並列に接続されたキャパシタンスとみなせるようだ。例えば、1.5pF並列にすると、145/435ではまだまだOKだが、1200MHzではかなりの悪影響が出る)

MMANAデータファイル
LDV1454351200d.maa ←適当にお使いください。

*1 V Beam といえば、ロンビックなどのバカ長いアンテナから終端抵抗を取り去った型式の進行波型っぽいアンテナ。

*2 なんだかなー・・・と思う人もいるかもしれん。(^^;) 日本語では 横V??

*3 AWXのときの木の板は、設置後1年近く経過し、そろそろ限界といった感じだった。

*4 10mmのパイプは、強風のためか若干ゆがんでしまっていた。

*5 50MHzでは使わないからパッチンコアは、こんなには要らない。50でのSWR特性: 50.6くらいで最低となるが、>3。

*6 後日、ケーブルの引き回しを変更。後からぐるりと回り込んで給電点に接続してみたが、有意差は観測されなかった。

*7 衛星専用なら、水平偏波にしてしまった方が、機械的にも電波的にもメリットがあるような気もする。

*8 Null方向以外だったらどこでもそれなりにUPできたりして。ただし、ゲイン不足なので出力15W程度だとNG。

*9 AWXと比較すると、素子数が半分になってしまったためか、広帯域性が若干犠牲になってしまったようだ。

*10 最近、ド田舎では、145FMでさえ交信相手に不自由してるのである。

*11 ちなみに、AO7には残念ながら届かないみたい。

*12 人間なんて、か(^^;)

*13 「モチベーション」とは書きたくない。

*14 重量バランスが問題だけど、マウント部分をすべて後へ移動すればなんとかなりそう。

Tada/JA7KPI : 2007年09月25日(火)
コメント(2) [コメントを投稿する]
JA4OHC 2007年10月08日(月) 11時

初めて投稿します。私もAWX,Vbeamを作っています。 いろいろ発展性があると思います。

JA7KPI 2007年10月08日(月) 23時

最高のアンテナは八木宇田とパラボラであることは、ほぼ確定しているわけです。<br>そんな中でいかにして皆さんの意表をつくことができるか・・・しかし、なかなか思うようにはいかないですねー。


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