再び高調波モードAWXアンテナの実験。強風で崩壊し泣く泣くエレメントを短縮した前バージョンであったが、やはり、エレメントは長くなければ面白くないのである。
今回のエレメントは、1cmのアルミ角パイプ。細くてヤワかなとも思ったが、とりあえず使ってみることにした。
エレメント長は152.7cm。実際の角パイプ長さは (マウント板の写真でおわかりいただけるように) 4本のうち2本が151.7cmと1cm短い。エレメントの取付けは、ステンレスの鍋ビス&ナット。
給電部の工作は、前バージョンの作りが「いいかげん」だったことを反省し、それなりにV/UHFアンテナらしいデザインとなっている。
また、給電部のエレメント用角パイプの下にはアルミフォイルを「く」の字型に切って敷いている。上側での接続は、圧着端子の圧着部分のワッカを切断して拡げたものを使っている。
左の写真がその給電部。ビスは全部同じように見えるが、給電線接続用の2つとそのすぐ隣の2つは、セルフタッピングビスである。ねじ込みすぎるとバカになってしまう危険性があるので、ここにタッピングビスを使うのは避けたかったが、まあ、作業効率の方を取ってしまった。その他のネジはマウント板の裏からナットでとめる普通のもの。
パッチン・フェライトコアは、3個使用。1200MHzのアンテナを作ったときは1個で十分だったので、波長3倍として3個。確たる根拠はない。
また、黄色く見えるのは、接着剤である。写真撮影後にも、固定と防水のためビス、ナットその他に少し塗っておいている。
さて、今回は、給電線(同軸ケーブル 5D-FB)の引き出し方向も変えている。平衡型アンテナであるから、この方が平衡度が高く、ケーブルに不必要な高周波電流が流れにくくなる。
さらに、マウント板の裏側に固定される棒も、ケーブルと同一方向としている。ついでに、前バージョンの実験で、マウント板の裏の金属パイプのアンテナ特性に及ぼす影響が懸念されたので、この部分には金属パイプではなく、木の棒(にビニルテープを巻いたもの)を使用している。
前バージョンのように垂直偏波で垂直の金属マストに近接して取り付けると、エレメントがマストをドライブしてしまい、結果マストに高周波電流が流れてしまう。いわゆる「マストに波が乗った」状態になり、たいていはビームが上向きになってしまうのだ。もっとも、その方が衛星には向いてるのかもしれない(^^;)けれど。
右がアンテナを設置後の写真である。衛星通信用として使うことを考慮し、仰角をつけている。
この写真では25度となっているが、実は20度にするつもりでいた。写真を撮った後に20度にしようとしたのだが、戻しすぎて今度は18度くらいになってしまった。(傾斜計みたいなものがないので、撮った写真から角度を判定)
仰角に関しては、現在主流の低軌道衛星通信では、仰角固定で使用する場合、その仰角は20〜30度とするのがよいとの研究結果が発表されている。ある程度地上波通信も重視しながら使うには仰角20度程度がいいのかな・・という漠然とした考えであったが、もちろん、仰角ゼロで衛星が使えないというわけではない。
上の図はSWRの周波数特性で、赤の点がSWR実測値である。前バージョンでは、MMANAでのコンピュータ・シミュレイション値と実測値とは、かなりの相違があったが、今回はトタン屋根との距離が近いことを除けば、シミュレイション値からずれる要素を排除できているのではないかと思われる。
また、シミュレイションで地上高を下げると、SWR最小の周波数は上昇する傾向にあるようで、このことから、やはりトタン屋根の影響がうかがわれる。
50MHzでのグラフは、今回は示さないが、50.0で実測SWR1.9、50.25で2.0であった。やはり、なんとかオマケで使えるというレベルである。なお、SWR最小周波数は48MHzあたりのようだ。
次の図は、仰角25度のときの垂直面指向性パタンである。
衛星オンリィでしか使わないのなら、仰角25度〜30度でもOKとは思うのだが、地上波にも手を出すということになると、やはりもう少し下を向いている方がいいのではないかと思われる。(これはあくまでも私見)
とはいえ、144/430MHzでは、ダクト等で割と高めの角度から降ってくるという異常伝搬も多いため、実際問題として大きく仰角をつけていても飛び/耳にはあまり関係ないという可能性もある。
最後は、下から見たAWXアンテナである。現在の仰角は前述のとおり18度となっている。
念のため書いておくが、本アンテナは、簡単構造でお手軽にトライバンドで使用可というだけのアンテナである。決して衛星通信にオススメのアンテナではない。単に「無線界の意表をつくことができる」という理由でKPIが製作・使用しているだけなのである。(^^;)
まあ、それはそれとして、衛星通信で使ってみた感想を記すと、まず、仰角をつけた方が確実に良い!!ということである。総合的に見ると、0.5mタイプのAWXよりアンテナゲインも勝っているし、視覚デザイン的にも飛びそうだ。FO29は0.5mタイプAWXではまずアクセス不能なのだが、この1.5mタイプではOK。
(0.5mタイプは、VO52で、ある程度衛星の仰角が高いときは、1.5mタイプよりもいいこともある)
やはり、0.5mタイプの方は144MHz〜1200MHzのトライバンドを目指すべきだろう。(え? またやるんですか?)
最後の最後に、このアンテナの極めつけの欠点を書いておく。それは・・・室内で組み立てることはできるが、組み立ててしまうと室内から外へ出せないくらいデカい・・・ということである。(エレメントを1本ハズして漸く外に出した ^^;)
MMANAデータファイル AWX.50145435c.maa ← 適当にお使いください
追記: やはり現在の仰角である18度での垂直面ビームパタンも掲げておく。
わずか7度の違いなのだが、どう見ても衛星には25度のほうが良さそうだ。ただしAOS/LOS付近と地上波重視なら、25度は上を向き過ぎか。
仰角なしのパタンは、前バージョンと同じ(ハズ)なので、そちらを。
2007/01/02追記: ほとんどサテライト(衛星)のみに使ってきたこのAWX。QSOパーティで、ようやく地上波で使えることとなった。
サンプルQSOはすべて144MHzの交信。(過疎県秋田のため、430MHzでは1局しか交信できなかった ^^;) 144での水平面指向性はダイポールよりも若干鋭い指向性となっているが、使った感じでは、ダイポールというイメージではなく、ビームアンテナなのである (もちろん、ダイポールだってビームアンテナなのだが)。
とにかく、たとえ同じく60km離れた秋田市の局であっても、局によってビーム方向が全部違うのだ。なんかアタリマエのようだが、これほど指向性が実感できるとは思ってはいなかった。山の上で使う50MHzの8エレ八木などとはまったく違う使い勝手である。
また、左上の垂直面指向性パタンで判るとおり、仰角3.2度の方向ではF/B比は無いことになっている。しかし、実際は間違いなくF/B比があり、ビームが上向きになっている方がフロントになっているのだ。フロントとバックで同じ信号強度という局もいたことはいたけれど、ほぼ全局がこのフロント(上向いてる方ね ^^;)の方が信号が強いのである。
と、いうことは、信号は水平に入射してくるのではなく、ある程度上から降ってくる・・・という感じなのだろうか。そうなると、「ある程度」って何度?? ということになるのだが・・・・
というわけで、このAWXでさえ回さないと十分に使えないなら (というか、どうせ回すのなら)、はじめから歴としたビームアンテナを使ったほうがいいのかもしれない。そして、そのビームアンテナには、仰角ロータも付けて・・・うぅむ。次の段階にシフトするか・・・・
はじめまして 楽しく読ませていただきました<br>さて昔30年以上前ですが ある雑誌にAWXを2組同時給電した 実験的な記事がありました 当時 復元して製作しましたが<br>確かに144,430はSWR1.2前後で 5m位の2バンドGPと互角に交信できましたが 50Mもローカル同士ならOKでしたが TVIがひどくて 一辺50cmのと60cmくらいのAWXを30cm離しTVフィダーを途中ひねってつなぎ 小さい方に50オームの同軸をつなぐ<br>HB9CV的な構造でした 記憶に残っています <br>シュミレーションとかはできないので一度実験してください
うーむ。それって、エレメント形状がAWX風なだけで、モロHB9CVでは?(^_^;)<br>デュアルバンドで使えたというところがミソかな。あとでシミュレートしてみますね。