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[Radio] スローパーモドキ その後

2016年12月29日 10時 更新

当方で使用中の「スローパーモドキ」アンテナは、普通のスローパー・アンテナのように給電線の片側がタワーに、反対側がワイヤ・エレメントに接続されている。
普通のスローパーは タワー最上部からの給電となっているわけだが、モドキの方はタワーの真ん中付近で給電し、ワイヤ・エレメントは滑車でタワー最上部まで引き上げてからナナメ下に引き下ろしている。こうすることでワイヤの水平部の距離を短縮でき、1.9/1.8MHz用アンテナのローディングコイル無しでの構築を可能としている。

1.8/3.5/7MHz用 スローパーモドキ。シミュレーション・データは HF/50MHz用アンテナと 自宅及び隣家3軒のトタン屋根込み。

右図が 1.8/3.5/7MHz用 スローパーモドキ。タワー最上部付近でワイヤを分岐させ、1.8MHz用のワイヤを東方向に、3.5MHz用のワイヤを北西方向に引き下ろしている。
ようするに、本アンテナはアンバランスな T型接地アンテナともいえるだろう。

また、一般的に 1.8MHz用アンテナは 7MHz付近でもSWRが良好になることがあるが、本アンテナも 7MHzでのSWRが良く、結果的に トライバンド・アンテナとなっている。

なお、コンピュータ・シミュレーションにあたっては 自宅と隣家3軒のトタン屋根、タワー及び乗っかっているHF/50MHzアンテナも イイカゲンながらデータ化し計算してみた。

タワーの接地抵抗は、建設時の測定では11Ωだったが、実際には ラジアル・アースも敷設してあり シミュレーションでは 8Ωということにしてある。


スローパーモドキ SWR特性 1.8/1.9MHz。黒:シミュレーション。赤:実測値。

1.8/1.9MHzでのSWR特性。黒がシミュレーション値。赤が実測値。

VY FB というほどではないが、許容範囲だ。1.9MHzでも SWR<2.5であり、Rigの内蔵ATUでなんとかなる。電波の飛びや損失による発熱等にもあまり影響はないと思われる。

1.8MHzでのSWRは 当然 長い方のワイヤ長で調節する。ただし、3.5MHz用の短い方のワイヤの影響もあるため、交互に調節する必要あり。


スローパーモドキ SWR特性 3.5MHz。黒:シミュレーション。赤:実測値。

3.5MHzでのSWR特性。黒がシミュレーション値。赤が実測値。

こちらも、イマイチSWR落ちきらないのだが、CWメインなので Noプロブレムだ。

3.5MHzでのSWRは 短い方のワイヤ長で調節する。1.8/1.9MHz用の長い方のワイヤの影響は小さかったように思う。

Un-Unを挿入するなどして SWRを改善できるとも思われるが、そうするとマルチバンドで使いにくくなる恐れがある。ここらへん、難しいところだ。


スローパーモドキ SWR特性 7MHz。黒:シミュレーション。赤:実測値。

7MHzでのSWR特性。黒がシミュレーション値。赤が実測値。

1.8/3.5MHzでは かなりシミュレーションに近かったのだが、7MHzでは ズレが大きくなっている。これは、タワーやその上に乗っかってるアンテナ、そしてトタン屋根の形状等がデータ化しきれていないということなのだろう。
波長が短くなると誤差も大きくなっていくということだ。

ちなみに、トタン屋根が無ければ SWR最小周波数は少しだけ上がる。これは 3.5MHzでも 1.8MHzでも同様だ。

また、7MHzでのSWR調節は・・長い方のワイヤ長に依存する。つまり、1.8MHzを優先するか7MHzを優先するか・・それは基本的に二律背反である。が、運が良ければ同期することもあるだろう。(^^;)



青:スローパーモドキ 指向性 1.8MHz。赤:トラップ逆V。(シミュレーション 打ち上げ角 7度方向 トタン屋根込みの計算)

1.8MHzにおける指向性利得の比較である。DXを考慮して打ち上げ角 7度方向のデータとしてある。青がスローパーモドキ、赤が同じ高さに上げたトラップ逆V。

なお、以下の指向性の図は 時計回りで170度方向が真北、350度方向が真南である。

1.8MHzでのスローパーモドキは ほぼ無指向性。しかも すべての方向で 逆Vに 3.5dB以上勝っている。もちろん、近距離向けの高角度方向については 軍配は 逆Vに上がるのだが。

ARRL160m後、久しぶりに 1.8で New A45(Oman)とできた。01時Jst頃である。依然として 朝には弱い・・ (^^;)

1.8MHzに関する文献を読むと、それなりの打ち上げ角でF層で反射させるとE層通過時の屈折とかで伝搬距離が短くなるとか、超低打ち上げ角にして E層で反射されるようにすると反射時の損失がF層よりも減るとか、微妙な角度で打ち上げると電離層の中をダクトのように伝搬して遠距離通信できるとかいろいろ書いてあるが・・ホンマかいな!? とにかく、3.5MHz以上の周波数とは伝搬の仕組みがちょっと違うらしい。勉強しなきゃ。


青:スローパーモドキ 指向性 3.5MHz。赤:トラップ逆V。(シミュレーション 打ち上げ角 7度方向 トタン屋根込みの計算)。

3.5MHzにおける指向性利得の比較。

まあまあ無指向性に近いのだが、短い方のワイヤを引いた方向・・北西・・Eu方向に若干ゲインが出ていて、ここでもすべての方向で逆V以上のゲインとなっている。

高角度への放射については 1.8/1.9MHzよりも多く出ているようで、国内もOKというアンテナになっているようだ。

なお、1.8/3.5MHzにおいては、トタン屋根のデータをすべて削除しても指向性には ほとんど影響は出なかった。波長がそれなりに長く、周囲の小さな物体は 無いのと一緒・・ということなのか。


青:スローパーモドキ 指向性 7MHz。赤:逆V。(シミュレーション 打ち上げ角 7度方向 トタン屋根込みの計算)。

7MHzでは ビミョーだ。赤は 普通の逆Vを想定している。しかし DXを考えれば Eu方向や北米方向は逆V以上だし、勝っているとしてもいいのでは。

7MHzでは、トタン屋根のデータを削除すると 指向性パターンにそれなりの変化が認められた。やはり波長が短くなると・・というか、屋根のサイズと波長が合ってしまう・・ということなのか。

国内用としては、やはり大票田の首都圏方面にNULLがあるのが痛いが、九州方面には若干 強いようだ。


青:スローパーモドキ 指向性 10MHz。赤:逆V。(シミュレーション 打ち上げ角 7度方向 トタン屋根込みの計算)。

実は このアンテナ、10MHzでも使っている。10.100MHzでの SWR実測値は 約 4。もちろんアンテナチューナ必須なのだが、ロウパワーだし なんとか使えている。

指向性については、屋根の形状にかなり影響されるようで、例えば西隣のお宅の屋根を計算から外すと北方向に割と鋭いビームが出てしまう。

周辺すべての屋根を計算しなければ正確な計算はできない・・というよりも、けっきょく まわりは屋根だらけなのだから、周辺の屋根の平均高の分だけアンテナ高のデータを低くして計算させれば OKなのかも・・??

さて、10MHzでも 逆Vと どっちもどっち・・という感じなのだが、さらに上の周波数である 14~18MHzあたりになると さすがに逆Vの方が勝つようだ。


スローパーモドキ・・もうしばらく使い続けてみようかな・・と考えている。

MMANA data file
Double Sloperoid_NoRoof.maa ←適当にお使いください。ただし屋根データ無し。これと上の図を比較すれば トタン屋根の影響も判る (^^;)


Tada/JA7KPI : 2016年12月27日(火)

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