「新アンテナ」のコメントでも書いたが、5エレ・スタックの 同相/逆相 切替システム を製作した。
システムというより、ギミックというべきかもしれない。
某青箱のような スタックの 上単独/下単独の切り替えはできず、単に給電の位相を 同相/逆相で切り替えるものである。
昨今、アンテナに仰角をつけて Eu等のDXを狙うとか、近距離Esでパイルを浴びるとかいうハナシを聞くわけだが、スタックの同相/逆相を切り替えることで、大仰な仰角ローテータやアクチュエータ無しでアンテナの「打ち上げ角」を変化させることが可能となるのだ*1。
システムの概要は、左図のとおりである。
逆相とは位相が180度(λ/2)遅れているのと同義なので、スタックの片側への同軸ケーブルをλ/2長くしてやることになる。
また、先端開放のλ/2ケーブルのインピーダンスは無限大であることから、同相時λ/2ケーブルを完全に切り離さなくても負荷にはならない。
よくある位相切り替えの概念図では同軸スイッチやリレーを ふたつ使っているのだが、この方式であれば高価な同軸スイッチは ひとつで済ますことができる*2。
システムの実物は、右図のとおりである。
移相ラインのλ/2ケーブルは 5DFB*3だが、これは 手持ちの 8D用 N型コネクタを使い切ってしまったためで、当初はここも8DFBで作る予定だった。
なお、このT字接続部分はコネクタは使用せず、8DFBを切開して5DFBの芯線をハンダづけし、8DFBの発泡ポリエチレン絶縁体で うまく囲み、然る後に編組線をハンダづけしてある*4。
同軸切替スイッチは、第一電波工業の CX210N である。
ちなみに、コメットの CSW-201GNは 使用しない方の接点がグラウンドに落ちる仕組みになっているため、このシステムでは使えない*5。
逆相時に約11cmの同軸ラインがぶら下がることになるなど、完璧なシステムとはいえないが、このシステムを入れたことによるSWRの乱れは 同相/逆相とも極めて小さく、ほとんど無視できる値であった*6。
また、アンテナへの8DFBは上下とも同じ長さである。完全に同相にするのであれば、本システム同相時の電気長は239mm*7ほどあるため、下側の8DFBを239×0.8≒191mm短くすべきである。
電気長239mmは位相では約14度遅れ*8ということになるわけだが、この程度の位相差ではフロントゲインで わずか0.01dBの差であることから、現時点では 完全同相とはせず、ケーブル長の調整はおこなわないことにした。
というわけで、本稿では以降 下側アンテナの位相が14度遅れているのを同相、187度遅れているのを逆相と表記する。*9
垂直面指向性のMMANAシミュレーションによる 同相/逆相 比較は左図のとおり。
同相のメインローブは 5度方向。サブローブが14度方向。10度、20度、30度方向に NULLがあるが、逆相では そのNULLを埋めるような形でローブが伸びている。*10
本システムは、ビームが上向くとか下向くというだけではなく、このようにビームの隙間を埋めるシステムであるということもいえるだろう。*11
また、下図は Es伝搬における距離と打ち上げ角の関係をグラフにしたもの*12である。
これはあくまでも幾何光学的に計算したものなので、距離500kmの局の信号が必ず仰角21度方向から降ってくるというわけではない。CONDXによって相当のブレがあるものと思われる。
てなわけで、ようやく実際の使用記となる。*13
★ハイライト★
★ローライト★ ? (^^;)
と、いうことで、本ギミックが有効な局面は、3エリア以東のEs/MSに ほぼ限られるようである。
しかし、これがなければ先の6&D*21で19と29のマルチは取れなかっただろうし、スイッチ一つでリニアを炊いた如く強力な信号を送り込み、ウハウハRUNの可能性も増えるとなると、それなりに有用な仕掛けといえるのかもしれぬ。*22
追記 → 5エレスタックのビームパタン
*1 一瞬で変化させることが可能だが、当然ながら連続可変はできない。
*2 144MHz以上では、やはり同軸リレー2個使うのが確実だろう。
*3 実際の長さは80%(波長短縮率)。
*4 その方が完成寸法を短くできると踏んだ。
*5 あぅ~ 余計な出費が・・ orz
*6 ということで SWRグラフは、割 愛 !!
*7 逆相時の電気長は3,099mm。
*8 逆相時は187度遅れ
*9 トータルの移相量は、ケーブル、コネクタ、同軸スイッチの合計。
*10 ただし、この計算は当然ながら周辺の建物や地形の影響を考慮していないので、あくまでも参考値である。また、当方のアンテナでは 逆相でのメインローブは30度方向だが、この角度はスタック間隔や地上高によっても変化する。
*11 もっとも、40度以上のローブでは電離層を突き抜け、50MHzを使うアマチュア用衛星が出現しない限りさすがに無駄だろう。(^^)
*12 Esの高さを 100kmとして計算。
*13 実際に使い出したのが 5月後半からなので、まだデータが少ないのだが・・
*14 トロッポの方が大陸からのTV波より高角度ということなのか?
*15 3エリア以東~。4 5エリアでも可能性あり。6エリアは逆相ではNG。
*16 BV等でそのような例があった。
*17 6エリアには まず効果なし。
*18 XE2CQなど。思ってたより高めのポイントから降って来ていた? それでも15度未満? 逆相時ピーク30度は高すぎるのかも。
*19 ただし、コントロールポイントが極めて近い場合については未検証。(今年は、昔経験したような白神山地を越えて強力に入感してくるような伝搬が まだないと思われる)
*20 同軸リレーを使って手元で切り替えられるようにするのがスマートかも。
*21 移動しなかったのは、本ギミックをテストしたかったからで、気合い足りなかったわけではない。
*22 同じようなことは 既にわりと多くの局がやってるような気がしたのだけれど、Net検索しても あまりHITしない・・ (^^;)
待つこと数週間、やっと出たか。詳細は後で。<br>*22だけど、そりゃ美味しいから書かないんでしょw。
で、秘伝の奥義を極め、達人となるわけですね。(^^;)
90年代に今の6M7JHVの元祖となるブーム長9.4mの7エレを作って、6.5m間隔くらいのスタックにした時、5月のF2+Esの複合伝搬で苦労したことがあり、真ん中に同軸リレーを二個使ったスタック/シングル切り換えや同相/逆送切換を試したことがありました。<br><br>シミュレーションによると、その構成で逆相にすると27度くらいのローブが出るということで、こちらからだと、やっぱり500km圏内のJA5、JA4、JA3などの近距離Esが良好でした。<br><br>ただ、悲しいかな単位アンテナが二本なので、アレーとして有効な移相は同相、逆相の二段階しかできず、その頃は、近距離Es以外はあまり使いでがありませんでした。<br><br>ローブの谷を埋めるという効果も確かにあるでしょうね。<br>あと、仰角機構だとゆっくり上げ下げするのが、スイッチだとスパッと瞬間で切り換えできるので比較しやすいですね。<br><br>アダプティブ(適応的)、ダイバーシチ(偏波、仰角、方位角その他複数の異なる要素を合成してより良い性能を得る)という両方の意味があって大変高級、でありますw。<br><br>*22だけど、今時、こんなことをできる人は稀だからでしょう<br>。やっている人は素晴らしいと思います。<br><br>あとアラキのスタックキットを見て思ったんだけど、角パイプにスリットを入れて、スライドVRみたいに移相量を連続可変できると面白いかも知れませんね。0~180度で3m必要だから大きすぎかなw。それだったら45度ずつリレーで切り換えるなどの電子移相器の方が良いかな。<br><br>今後、QROで、04県からのコンテストやDXのご活躍を期待しております。
β師、コメントありがとうございます。<br>3スタックにしてパチパチ切り替えるのも面白そうですが、まず、サマージャンボに当たらないと・・・ (^^;)
横から失礼します。<br>いきなり話の腰を折るようですが、KPIさんは当方と同様5eleですので、経験上劇的な効果はないのではないかと思います。<br>逆相でいいのはバズが切れることくらいなんですよねぇ。<br>(S/Nも悪くなるし)<br>シングルでも短距離Esがキツくなる8ele以上辺りでは絶大な効果なのかも知れません。
確かに多くの局面では同相の方が良いのですが、逆相でQSOしてて同相に切り替えたら聞こえなかったとか、同相で呼ばれてカスカスだったのが逆相でR5ということが 5エレスタックでも少ないながら現実にあるということを書かせていただきました。シングルと逆相スタックの比較はしておりません。<br>それと、逆相でS/Nが悪くなるのは、★ローライト★に書いたとおりなんですが、周囲の環境にもよると思います。
上田さん こんばんは。<br>5エレでも地上高を上げると、垂直面内のシミュレーションの図のように細かいローブが出るので、逆相でも結構効果があるように思います。あとKPIさんところもタワーになったので結構、理想に近い特性が出ているかと思います。<br><br>これでスタック/シングル切り換えがあると面白いですね。選択肢は多い方がいいですw。
8eleを例に出したのは、もちろんスタックを想定しています。<br>BMJさん、確かに効果がある「場合がある」とは思います。<br>経験上、450km位まではほぼ逆相。<br>450〜600kmは、オープンの仕方や聞いたタイミングで変わるので判定が難しい。<br>それ以上は、同相という感じです。<br>それにオープン頻度を考慮すると、前発言のような感想になってしまいます(要するに使える頻度が極端に少ない)。<br>KPIさんの結果が、中途半端な距離での判定が出来ていて、かつ距離感が違うところがまた興味深いところではありますが。。。
逆相スタックの「使える頻度」が「少ない」のは、hlpさんのおっしゃるとおりです。当方から500km離れた首都圏でも、逆相が良い場合、同相が良い場合、どちらもあります。また、1000kmほど離れた北九州で逆相が良い場合もあるのです。<br>Esの位置や相手局のアンテナの打ち上げ角等、複数の要素が絡んでくると思いますので「この距離なら逆相」という決め打ちが できない のが またおもしろいところです。
色々と工夫されていますね。<br><br>わたしの場合はHFの例ですが、絶縁型のBNCコネクタをアルミダイキャストケースに直接つけて位相を反転させています。この方法が一番安価だったので、年金生活者向きです。hi。<br><br>JG1UNE小暮OMがCQ誌2014年2月号44pに紹介した例では、同軸ケーブルに強制バランを2個つないで位相反転させていました。