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[Radio] トラップ周波数とアナライザ

2014年03月10日 23時 更新

以前にもトラップの共振周波数について書いたことがあり、そのときは アンテナアナライザとワンターン・コイルで SWR最小の周波数が共振周波数ということにした。

しかし、昨年のCQ誌の記事*1では、「インピーダンスがいちばん低い周波数がトラップ・コイルの共振周波数です」と、ある。

いままでトラップを作ってきて、確かにインピーダンス最小周波数が共振周波数と思える事例もあったのだが、それがすべてではなく、このCQ誌の記述は不十分なのではないかと ずーっと気になっていた。

で、今回、実験してみる気になった。

測定実験の概要

実験の概要は、左図のようなもので、アンテナアナライザ BR-210からリンク・コイル*2でトラップのコイルへ結合させ、アナライザの発振周波数を変化させ、検出用の2ターンコイル→ダイオード検波→テスタ(300mVレンジ。内部抵抗は約10kΩ)と接続されている。

トラップが共振すればテスタの針が振れるはずで、このときの発振周波数が共振周波数ということになる。また、SWR最小、インピーダンス最小、インピーダンス最大の周波数も測定し、その関係をみる。


共振周波数測定実験中の写真

BR-210側のリンクコイルがワンターンの場合と 2ターンの場合の2パタンやってみたが、2ターンでは メータのディップやピークが判りにくく、途中で測定を断念した。BR-210側リンクコイルは、ワンターンにするのがいいようだ。

表の中で Cの項が noneになっているのは、コンデンサ無し・・つまりコイルの自己共振周波数を測っていることになる。
not detected は、電圧等のピークやディップが検出できなかったもの。

さて、下の測定結果表をみると、電圧最大・SWR最小・インピーダンス最小(または最大)が同一周波数というものもあるが、電圧最大とSWR最小が同一という例が多いことが判る。また、電圧最大とSWR最小が異なっていても、インピーダンス最小よりもSWR最小の方が電圧最大周波数に近い。


測定結果表

実験のとおり、インピーダンス最小周波数は検出できない場合があるので、「インピーダンスがいちばん低い周波数がトラップ・コイルの共振周波数」というのは正しくない場合があるといえるだろう。

なぜこういうことになるのかについては、アンテナアナライザの発信器としての信号源インピーダンスやら、被測定コイルの巻数の問題やらが絡んでくるのではないかと推測する。

そして、アンテナアナライザとワンターンコイルを使用してのトラップ等の共振周波数測定については、やはり「共振周波数は SWR最小周波数にきわめて近い」・・としてよいのではないだろうか? *3


*1 2013年8月号 p.73

*2 1ターン OR 2ターン

*3 当方、電気回路演習は苦手だったため、解説はパスさせていただくことにする。(^^;)

Tada/JA7KPI : 2014年03月01日(土)
コメント(4) [コメントを投稿する]
β教粗 2014年03月05日(水) 22時

元記事を読んでいないので条件がわからないのですが、実験でBR-210でSWR最小になるのは、発振のエネルギーが被測定トラップに吸収されるからでしょう。<br><br>そんでもってデテクターの電圧が最大になるのはトラップが共振して、エネルギーが最も大きく輻射されるからでしょう。並列共振すればインピーダンスは最も高くなりますよね。<br><br>共振周波数でインピーダンスが最も低くなるのは直列共振と思うのですが。

JA7KPI 2014年03月06日(木) 02時

発振のエネルギーがトラップに吸収・・てのは違うような気が・・

β教粗 2014年03月09日(日) 11時

そうかなぁ。ディップメーターと同じ原理では。<br>エネルギーが吸収されるのとSWRが低く表示されるのの関連は測定器によっても違うかもしれないけど。

JA7KPI 2014年03月10日(月) 23時

BR-210は能書きのとおりの測定をしていて、共振によって虚数成分がゼロになるためSWRが最小になるのではないでしょうか。<br><br>実験で使った27回巻のコイルの例では、SWR最小時の値はだいたい3.6。虚数成分ゼロってことは、50×3.6=180(Ω)または 50÷3.6=13.9(Ω)ということになりますが、インピーダンスの指示値はだいたい180Ωとなっています。<br><br>さて、リンクコイルは1ターンで、被測定トラップのコイルは27ターンなので、これが理想トランスならば共振時のインピーダンス比は、巻数比27の自乗 27×27=729倍になり、180×729=131,220(Ω)。BR-210の側からは、この 130kΩがコイルと並列に接続されている純抵抗として見えるわけです。実際には理想トランスにはならず、インピーダンス比は巻数比の自乗とは一致しないらしいのですが、経験からいえば、この手のコイルでは あまりかけ離れた値にはならないのではないかと思われます。<br><br>一方、コイルのインダクタンス L は、共振周波数の公式 f=1/2π√LCから、f=3.11MHz C=120pFを代入すると、だいたい20μH。空芯コイルの近似式で 巻数27 直径6.2cm 線径2mm 巻スペース2mm として計算しても近い値になります。このコイルの3.11MHzにおけるインピーダンスは 2πfLだから 約391Ω。ここで直列並列変換の手法でコイルと抵抗の並列接続から直列接続に変換してみると、直列の抵抗 r は 2πfLの自乗/並列抵抗値 なので 391×391/131,220=1.17(Ω)となり、コイルの Qは 391/1.17=334となりますが、まあ妥当な線なのかも・・と。<br>また、コイルに120kΩの抵抗を並列に接続して測定してみると、インピーダンスは約80Ωと出ます。コイル自体の等価並列抵抗130kΩとの合成抵抗は約62kΩになりますが、これを先の変換比729で割ると約85ΩとBR-210による測定値に近い値となります。


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