しばらく前に壊れた衛星通信用アンテナをようやく修理・・というか、作り直してみた。
残念ながら(^^;)、今回は、極めて普通に近いアンテナである。145MHz用 4エレHヘンテナと、435MHz用 7エレHヘンテナだ。
さて、435の7エレはもちろんだが、145の4エレも設計からやりなおしている。
仕事から帰宅してからシコシコ組み上げ、各局のGW移動に臨みたかったところだが、間に合わず。おまけに体調を崩して*3しまい、ヘロヘロとアンテナが上がったのは 5/2の午後になってからだ。
さておき、145の4エレは基本的に前のアンテナのパーツを流用している。当然ブーム長も同じく 91cm。
今回は、短いブームからゲインを絞り出すのではなく、給電部分をワイドスペースとして広帯域性を重視した設計とした。もちろん、利得低下はできるだけ抑えるようにする。
エレメントは今回も1mm厚のLアングル材(12mm×12mm)だが、リフレクタ部分は手持ちの材料の関係で10mm×10mmの角パイプを使っている。
Lアングル材については、前のアンテナのエレメントが強風で折れたことを受け、ブームへの取付け部分を二重化してある。
上図がシミュレーションによるビームパタン。赤が仰角ゼロ。青が実際の設置と同じ仰角10度の計算値である。
衛星通信オンリィで使うのなら、仰角は15〜25度に設定すべきだろうが、地上波にも未練があるKPIは なかなか上を向けられないのであった。とはいえ、10度だけなら上に向けても、水平方向のゲインの低下は1dB未満。
いいかげんなビームパタンの測定では、ほぼシミュレーション値と同じと出た。
SWRカーブは、赤が実測値。オフバンドの部分は、SWRアナライザ BR-210で測定*4。シミュレーション値と比べると まあまあなのだが、納得いかないところもある。詳しくは後述。
435の7エレは、145の4エレとブーム長が ほぼ同じ。仰角固定で衛星に使うのなら、5〜6エレの方が使い易いだろうが、ここでも地上波未練で7エレなのだ。
ブームは、10mmの角パイプ。エレメントは4エレと同じ Lアングル材だ。エレメントは、4mmのタッピングビス+接着剤でブームに固定。
上図がシミュレーションによるビームパタン。赤が仰角ゼロ。青が仰角10度の計算値。実際の衛星通信でも、仰角50度を超えると苦しくなる。水平方向のビームパタンについては、こんなものかな*5、と。
さて、問題のSWRカーブだ。いちおうバンド内 SWR<2 なのだが、シミュレーション値とは かなり異なっているわけだ。
しかし、この原因がまったく解らないのである。
今回は、いつもの Lアングル材の430MHz帯初適用事例でもある。例のL型→円形断面への変換式「0.393a」はUHFでも使えるのだろうか・・まず、こいつを疑ってみることにする。
UHFで使える測定器はイイカゲンなものすらないため、とりあえず手持ちのBR-210で同一長(63cmくらい)の Lアングル材(12mm+12mm)と銅パイプ(4.1φ)のSWR最小周波数(110MHzあたり)を測定してみる。この二つの測定値が ほぼ同じなら、かの変換式は正しいといえるのでは??・・という皮算用だったが、これが ほとんど同じなのである。
やはり「0.393a」でOKてぇことか。
あと、今回は同軸ケーブルもすべて新品と交換している。フジクラの5D-FBだ。この速度係数も疑うことができる。Uバランの1/2波長迂回路の長さに係わってくるからだ。が、天下のフジクラ*6である。規格から大きく外れることはあるまい。
次に考えたのが「ブームの太さの影響」である。
エレメントは金属(導体)ブームに取り付けられているから、その中央部分は等価的(電気的)に太くなっているとみなすことができる。つまり、エレメントの中央付近は、インダクタンスが並列化されているような状態であり、この影響を打ち消すためにはエレメントを少し長く補正する必要があるのだ。*7
で、その補正値だが、今は亡き「Ham Journal」のNo.14や 「EME HAND BOOK」などに資料が載っている。それによれば、145の4エレでは +12mm。435の7エレでは +7mmと出た。*8
短くしなければならないのなら切ればいいだけなのだが、長くしなければならないということになると・・苦肉の策で、エレメント端にタッピングビスを取り付けることでビスの長さ分だけエレメントを延長することにした。
ちなみに、上の実測SWR曲線は、この「ビス延長作戦」後の測定値である。延長しないと、バンド下端のSWRが悪くなってしまう。デュアルバンドHヘンテナの144MHzでのSWRがあまり良くなかったのも、これが原因か。
145MHz4エレは これでいいとしても、435MHz7エレのSWRカーブはイマイチのママである。
他に考えられるのが、ブームに流れる高周波電流の影響だ。
Hヘンテナでは、その構造上、金属ブームを使うとブームに電流が流れてしまう。シミュレーションによれば、フロントゲインにはほとんど影響しないものの、SWRには影響が出やすいようだ。しかしながら、いろいろ条件を変えてやっても、シミュレーションでは上の実測値のような傾向は出てこないのである。145MHzの実測値がシミュレーション値と近いのも なんだかなー・・て感じ。*9
とりあえず、ブームに流れる電流をなんとか阻止すれば、少しは改善されるだろう・・と、ブームの給電点直下と第1ディレクタの後に分割コアを入れてみたが、バンド下端で若干の改善が見られる程度であった。
というわけで、若干の問題を抱えている Hヘンテナではあるが、実際は、きわめて普通に使えているのである。
ただし、前述のとおり、仰角50度を超えると435MHzでは苦しくなってしまう。しかし、以前のアンテナにあった仰角20度付近のNULLは解消されている。
7エレになって、当然ながら435MHzでのビーム幅(水平面指向性)も狭くなっているので、ローテータ操作の頻度も若干上がることとなってしまった。
こうして、いつのまにかフル電脳コントロールになって行くのかいな。
ま、それはさておき、これでしばらく運用を続けてみるつもりである。
久々に屋根の上の雪が完全に消えたので、衛星通信用アンテナの変更作業を実施した。
どこを変えたかというと、まず、435MHz用7エレ Hヘンテナの上下を逆さまにした。つまり、X軸で180度回転させたのだ。これで、給電点が145MHz用と同じくブームの下側となった。
Hヘンテナを垂直偏波で使う場合、どちらから給電するかで悩むわけだが、地上波でなく衛星メインで使うのなら、やはり給電は下からおこなった方が良い・・と考え直したのだ。*10
ついでに、10度だった仰角を、15度と若干上に向けてみた。15度にしても、メインローブのゲイン低下はMMANAの計算によれば約1.3dBだ。*11
上図は、緑が仰角15度、赤が仰角ゼロの本アンテナ。茶と紫は上下逆にする前のアンテナの仰角10度と仰角ゼロのパタンである。上下逆にした効果がどれほどのものかは、ここではわからない。*12
仰角15度への変更*13については、とりあえず、AO-7のSSBで初めてQSOできたので、まあ、いくらかは効いているのかなと。
SWR特性は、上下逆にして再度測定してみたが、傾向としては去年5月の設置のときと同じだ。青が最新の測定値。5月からそれなりに時間が経過しているし、こんなものかもしれない。*14
*1 自分が面白くて他人も面白がる可能性>自分は面白くなくて他人が面白がる可能性・・だろう。たぶんね。
*2 しかし HAMにおける「実益」って、何? けっきょくは脳内麻薬か (;^^?
*3 感染性胃腸炎とのこと。38度超まで熱上がったのでインフルエンザかと思った(^^;)。5/2朝に病院で薬をもらい、なんとか快復。
*4 バンド内では、BR-210と WelzのSWR計の表示値は ほぼ同じ。
*5 430MHz帯以上では「測定器」といえるほどの設備が無い。(^^;)
*6 モロ先入観なのだが。(^^;)
*7 テーパー・エレメントの問題も、けっきょく これと同じ考え方か。
*8 ブーム直径が0.01波長の場合、補正値は+0.0063波長。0.016波長の場合、補正値は+0.0112波長。
*9 435MHz用のSWR計がオカシイという可能性もある。(^^;)
*10 自宅近傍のノイズを拾いにくくなるというメリットもある?? てゆうか、それなら仰角を付ける方が効果的だろう。
*11 しかしながら、AOS/LOS間際の性能は間違いなく落ちた・・と思われる(^^;)。12度あたりでやめときゃ良かった??
*12 仰角ゼロでの比較から推測するしかないが、その差はわずかか?? ほとんど宗教的な領域になっていくのかも??
*13 もちろん、145MHz用の4エレも同じ仰角に変更している。
*14 若干良くなっているのはラッキー・・・なのか?? (^^;)