一辺約50cmの2m用DPをベースにしたAWXアンテナが144/430/1200MHzの3バンドで使える(ことがある)のは、わりと知られているが、50/144/430MHzの3バンド用AWXってのも可能であることは、ほとんど知られていない。(ホントか?)
というわけで、トライバンドAWXアンテナを作ってみた。
まあ、超有名かつ単純構造のアンテナなので、過去に50/144/430MHzの3バンド用AWXを作った人がいないわけがない・・と思うのだが、KPIは、たまたま「お手軽144/430用アンテナ」を考えていたときに、なんとなく使えそうなことを発見してしまったのであった。
しかし、「AW」ってのは「ALL WAVE」のハズだから、「トライバンド」というのを付加するのは、なんかヘンである。
(重複した表現ってやつね。まぁ、いいか。 ^^;)
本来のAWXアンテナとは、HFハイバンド用のエレメント長が、1/4λ〜5/8λのブロードサイド・アレイ的な動作のアンテナをいうものと思われるが、ここで取り上げるのは3倍以上の高調波アンテナ動作によるしかもエンドファイア・ビームである。
普通のAWX(一辺 5/8λ以下)は、水平偏波の場合、「><」の垂直方向(画面に垂直)にビームが出るが、エレメント長が 2/3λを超えたあたりからビームは「><」の上下↑↓方向に出るようになる。もちろん90度傾けて垂直偏波にした場合は、ビームは水平←→方向に出るわけだ。
というわけで、この手の高調波を乗せるAWXを 高調波モードAWX と呼ぶことにしよう。(流行るか?)
アンテナの構造は、写真を見ていただければお解りかと思う。エレメントは、アルミのL型アングルで、19mm×19mm、厚さ1mmのものである。(ただし、写真には12mm×12mmを使った初期バージョンが写っている)
エレメントブラケットは、木材(厚さ約10mm)を使っている。エレメント固定のためのボルトナットは4mmφ。
右は、仮設置時の写真。現在は、エレメントは12mm→19mmのLアングルに変更し、マストも3mのステンレスパイプ(物干し竿)に変更。とりあえず屋根の上に顔を出して回転できる形になっている。
なお、エレメント長は、4本とも等しく1468mm。MMANAでの計算では、
19mm×19mm厚さ1mmのLアングル材は半径7.86mmのアルミ線として計算させている。
(この換算は、日本放送出版協会 昭和50年発行の「ハムのアンテナ技術」に掲載された式をもとにしている)
給電は、Lアングルの端に圧着端子をネジ止めし、それに5D-FBをハンダづけしている。また、オマジナイとして、パッチンコアを数個入れてあるが、どの程度効いているかは今のところ不明。
各バンドにおけるビームパタンは左のとおり。と、いっても、これらはMMANAでシミュレイトさせたもので、実際に測定したわけではない。
ただ、145MHzにおいては、ほぼ計算どおりのパタンになっていることは「感じ」として把握できている。
(なんだそりゃ・・ ^^; つまり、145のパタンにおける60,120,240,300度のnullは良く分かるということ)
435MHzと145MHzは似た傾向のパタンとなっている。なお、×の交差角度を変化させてゲイン最大点を探索してみたが、けっきょくデフォルトの90度がゲイン最大であった。
そのゲインは、同一地上高のダイポールと比較して145MHzで約4dB、435MHzで約5.5dBである。
グラウンド・リフレクションによるゲインの嵩上げがあるせいでハイゲインのように見えるけれど、ま、こんなものだろう。
50MHzでは通常動作モードになり、ほぼ無指向性。ゲインはダイポール比で1dB程度あるが、ほとんどダイポール並みといってもいい。SWR的にも、50MHzはオマケといったところ。まあ、Es出たときなどは、それなりに使えるだろうけれど。
さて、SWRのハナシになる。435MHz帯でのSWR最低周波数は計算(×)と実測(●)で約1MHzの違いなのだが、帯域がかなり狭くなってしまっている。
145MHz帯では、計算では低い方でSWRが落ちているが、実測では高い146MHz近辺がいいようだ。
また、50MHz帯では計算ではバンド内 SWR 2以上だが、実測では51MHzで1.6程度まで落ちている。
MMANAの計算結果と実測がこれほど異なる原因は何か?
どうも、これらが複雑に絡み合っているとしか思えない。435MHzの帯域が狭いのが気にかかる。CWバンドでは終段保護回路によってパワーが出なくなる場合があるのが痛い。しかし、どうせ通常FMと衛星バンドにしかQRVしないと思うので、これ以上は追求しないことにした。
次は、先日まで使っていたデュアルバンドのモービルホイップとのビームパタン比較で、オレンジがホイップ、青がAWXである。
水平面指向性はさておき、衛星通信で問題になるのが垂直面指向性だが、衛星に有効といわれている打ち上げ角30〜50度方向にはnullがあり、とても衛星通信用のアンテナとはいえない。
まあ、その分水平方向へのゲイン増加になっているのだろうけれど。
リンク先に、仰角20〜65度での指向性パタンを示す。図を見ていただければ分かるが、角度が高くなると、かなり無指向性に近くなってくる。(ゲインがないのが残念)
つまり、多くの場合、衛星の見え始めのときだけは一応フロントを向けておき、あとは回さないという運用になる。
もっとも、Max Elevationがそんなに上がらないパスの場合は、衛星を追ってアンテナを回さなければならない場合もある。
それでも、ホイップのときよりもゲインが増えたせいか、FO29の低角度が続くパスでもループが聞こえるようになったし、実際にQSOもできている。(ただし、FO29では、他局の信号は聞こえても、自局の信号が聞こえない場合が多い)
20〜30度の仰角をつけて設置することで衛星通信用としての能力は向上するものと思われるが、地上波の方も気になり、当分の間はこのまま使っていくつもりだ。
さて、このAWX、bLOG執筆中に低気圧の影響による突風でエレメントが折れ、脱落してしまった。当初、12×12のLアングル材を使っていたのだが、やはり捻れに相当弱いようである。
このため、急きょ19×19のものに変更したのだけれど、アルミの厚さはどちらも1mmなので、受風面積が大きくなった分、不利になったような気もしている。(^^;)
使用の現況としては、145や433でCQ出しても誰も呼んでくれないし(^^;)ほとんど衛星通信にしか使っていない。V/UHF用アンテナとしてはかなりデカいが、構造が単純でお手軽自作でマルチバンドにQRVできるので、とりあえず良し、としておこう。
MMANAデータファイル → AWX.50145435b.maa 適当にお使いください。
追記: 11/7、寒冷前線の通過にともなう西からの強風により、かねてから懸念していたとおり、全エレメントが折れてしまった。(T_T)
L型アングル材は決定的に強度が足りない。1m未満ならなんとか保つのだろうが、このアンテナのようには長くはできない。やはりここはパイプ材にすべきだった。
ということで、折れたエレメントを余っていたLアングルを使って1/3の長さ(47.1cm)で作り直したのが右の写真である。詳しいデータは省略するが、145MHz帯は142MHz〜159MHzでSWR<1.5。430のほうは、ちょっと帯域が狭く、433MHz〜436MHzでSWR<1.5。
もしかして1200MHz帯でも使えるかと期待したが、残念ながらSWR<1.5にはならなかった。一部の周波数で2未満にはなるが、1295MHz近辺はSWR>4であった。
衛星通信での使い勝手では、AOS/LOS付近は聞こえにくくなってしまったものの、それ以外では逆にアクセスしやすくなってしまい、あ、やっぱし・・・と(^^;)。こうなると、やはりある程度の仰角をつけるのが衛星通信には有効なのだろうな。そうなると、ちょっとしたビーム・・巷でいうところの 子山羊「小八木」を用意するということになるのかも。
追記: その後のMMANAでのシミュレイションで、エレメント半径をあまり大きくせず、エレメント長は長めにした方がいいことが判ってきた。これで1295MHzでも使えるようになるハズ。
→続編 AWX Antenna Again へ つづく