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[Radio] ダブル逆L その後 (追記訂正)

2005年06月04日 17時 更新

ダブル逆L の実験を続けているが、まだ納得のいく結論が出ない。というか、例えば50Ω正規化でVSWRがかなり高い・・給電点で計測してSWR=20なアンテナがあったとして、同軸ケーブル(Zo=50Ω)で給電点から引っ張って来て、送信機近傍に設置したアンテナカプラ(チューナ)で強引にSWR=1に整合を取ったとする。もし、ケーブル自体の損失が限りなくゼロに近いとすると、送信機の電力は100%アンテナに送り込まれ、放射されるのではないか。アンテナカプラは、送信機側から見てケーブルによって変換された見かけのインピーダンスを50Ωに整合させるわけだが、逆にカプラで整合している状態でアンテナ側から見たインピーダンスはケーブルが逆変換するわけだから結局アンテナのインピーダンスと共役になっているはずで、どこにも不整合は存在しないのではないか。

もちろん、ケーブルは銅かなんかでできているわけで、超伝導現象でも起きない限り電気抵抗による損失があるし、放射(漏れ電波)による損失もある。しかし、それは極めて小さな損失でしかないのでは?? JA7KPIは8D-2Vを13.4m引っ張ってるが、30MHzにおける損失は0.5dB未満だ。

SWR電力損失(dB)カプラ入りの損失(dB)改善(dB)
21.010.610.40
31.750.790.96
42.440.981.46
53.051.161.89
105.312.013.30
156.802.734.07
207.913.354.56
309.544.385.06

アンテナのSWR=20ならば、非整合による電力損失は 7.91dBとなる。それでも50Wの送信機出力なら、アンテナからは 約8W分は出ていく計算になる。出力5W/QRPの信号が十分な強さで入感することも多いわけで、SWR=20であっても同程度以上は飛ぶはず・・・なのである。しかし、受信のことを考えると、アンテナ系で7.91dBの損失がある・・・つまりそれだけのアッテネータを挿入したのと同じわけだから、ハイバンドではキツイだろう。(すんません。計算ミスしてましたので、なおしました。許してゆるして・・)

ここでまた最初のアンテナカプラによる整合のハナシになるけれど、前述のSWR=20のアンテナで損失が7.91dBもあるものがカプラによってどこまで改善できるのか・・・というのが問題なわけだ。で、計算してみたら、ケーブル自体の損失(0.5dB)も考慮したロスは約3.35dB。

(修正前は、大きな勘違いをやらかしてまして 0.7dBという間違った数値になっていました。またまた 許してゆるして・・・^^; まだ間違っている可能性がありますので、ご注意ください ^^;)

その差4.56dBがカプラによって改善されたということになる。

では、カプラでSWRを無理やり落としたとしても、ぜんぜん飛ばない・・・というよくある現実は何が原因なのか、いったいどこで損失が発生しているのだろう。

カプラの先に同軸ケーブルをつなぐな・・というハナシはよく聞く。確かに同軸ケーブルは意外に損失が大きい。はしごフィーダの方が少ないくらいだ。また、1mあたり100pFもの静電容量があるから損失がデカいということも聞く。しかし、それは集中定数的に見た場合のことで、実際のケーブルは伝送線路なわけで、損失云々をいうのであれば誘電体損失についていうべきなのでは??

SWRケーブル損失(dB)電力損失(dB)カプラ入りの損失(dB)改善(dB)
50.53.051.161.89
513.552.121.43
524.553.710.84
535.555.040.51
557.557.360.19
200.57.913.354.56
2018.415.263.15
2029.417.701.71
20310.419.411.00
20512.4112.040.37

なんせ、いくらカプラをカマせてみてもケーブルに定在波が乗っているのは変わらないし、電圧(or電流)が大きいところではマトモな使い方のときよりも損失が大きくなる可能性はある。同軸ケーブルってのは、そもそも設計上、定在波を積極的に乗せることを想定していないのだから。

ケーブルの損失を増加させた場合の改善度について計算してみたら、ケーブル損失が大きいほど改善効果は減少するということがわかった。ケーブルに限らず、途中に入るバランやカプラ(ATU)そのものの損失も同様に考えられる。やはり、「チューンがとれているのに飛ばない」というのは、途中に入る損失が問題となるようだ。

まあ、そういうわけで、久々(20年ぶりか?)に紙と鉛筆(+関数電卓+Excel)でインピーダンス計算なんかをやっていろいろ考えてみた次第。


で、本題の ダブル逆L だが、森吉、十ノ瀬二ツ井のあとに琴丘と能代(自宅近くの中川原堤防移動 GLも自宅と同じ ^^;)でも使ってみて、エレメント長はいちおう落ち着いた。その寸法は、左右の水平部=7.15m(それぞれ)、垂直部=6.15mである。大きさだけを見ると、同調型 平行二線フィーダを使った10MHz用逆Vといった感じ。給電点にはバランが入っていて、そこからは前述の8D-2VでRIGまで引いてきている。(訂正:「同調型」フィーダ は、線路長がλ/4の整数倍で使用するもの)

この状態で、RIG内蔵ATUをONにし、7MHz〜28MHzでSWR=1にチューン可能。3.5MHzでもいちおうSWRは落ちているが、「飛び」の方は未知数(未交信)。1.9MHzではまったくチューンがとれない。

Double Inv-eL 24MHz

MMANAでの計算によれば、同軸ケーブルでATUまで引いているためか、直接給電する場合よりもインピーダンスが低くなるようである。前に 1:4 のトランスを使って200Ω給電・・・というハナシを書き込んだが、いちおう整合がとれている状態での試験では50W連続送信でもなんとか使えるという感じだったものの、実際にアンテナに接続して使ってみたらコアが発熱し、SWRが時間とともに変動してしまうという現象が発生してしまった。

なお、掲載しているNEC2 for MMANAのパタン図は、同軸ケーブルをつながない状態で計算させたもの。水平面パタンは打ち上げ角=30度のもの。(なお、NEC2 for MMANAは、「DM2 Seg」にチェックを入れて計算させると精度は落ちるが高速に計算できる)

ところで、このアンテナの有効な放射素子である水平部エレメント長がなぜ約7mなのかというと、QRV想定最高周波数である28MHz帯における3/4波長が約8mであることが決め手となった。エレメント長が3/4波長を超えると、水平面指向性は四つ葉(六つ葉?)のクローバの如く分裂してしまうし、打ち上げ角(垂直面指向性)も高くなってしまう。ただし、ゲインは5/8波長(6.68m)で最大になり、7MHzや10MHzでの使用を考慮するとエレメントはそれなりに長い方がよい・・・というわけで8mの手前の7.15mということになったのであった。

Double Inv-eL 18MHz

ちなみに、最近コメットが発売したマルチバンドの垂直アンテナ(CHA250B)のエレメント長は7.13mであり、極めて近い。おそらく、同じ考え方によるものだと思われるが、定かではない。

さて、実際のQRV(琴丘では18MHz、能代市中川原では24MHzをメインに主にハイバンド)ではCONDXがよかったせいもあり、ATUで無理やり整合させている(という表現もヘンなのだが)とは思えない飛び具合であった。

最後に・・・このアンテナ、後になって気づいたのだが、非常に似ているアンテナがあるのだ。それは、いわゆる「ハーフサイズ G5RV」である。G5RV/Louis Varney氏は2000年に亡くなっておられるが、氏が「G5RVアンテナ」を発明したのは1966年で、ヨーロッパでは現在でも市販されているということである。これにはビックリであった。

Tada/JA7KPI : 2005年06月01日(水)

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