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[Radio] 衛星向けビームアンテナ

2008年01月03日 20時 更新

Two Beams Toward Satellite at Fujisato QN00CH

連日の強風のため、なんにもできないでいた435MHzと145MHz用のビームアンテナ。

435MHz・・12素子 八木宇田  Gd:14.55dBi ブーム:2m
145MHz・・ 6素子 Hヘンテナ Gd:11.24dBi ブーム:2m

いいかげん、部屋の中に置いとくのもナンだなぁ・・と思ってたら、本日はいいお天気とまではいかないものの、風はなんとか止んでくれた。
これでようやく計測と実験ができる。

435MHz用は、ずいぶん前にハムフェアあたりで入手したポリカーボネイト製のエレメントブラケット*1(BIJブラケット)を使ったツキウ商会キット*2の改造版。
元々はブーム2本繋ぎの18エレだったのだけれど、2mのブーム1本の12エレにモディファイしてみた。3mを超えるブームでこの細さ*3*4では、ブームは垂れるわヤワだわ取り回しに苦労するわ(^^;)*5で、ちょっと心許なかったのである。

ブーム長、エレメント数が異なっているだけで、あとはツキウのキットそのまんまだ。なお、エレメントの再配置はMMANAの最適化機能を使用した。(エレメント長はイジっていない)

最終調整の前に、近所の堤防の上に出てFO29を受信してみたところ、ビームが切れすぎるということもなく*6、それでいてモービルホイップとは次元の違う信号の強力さを実感。これなら使えそう。(おまけでGWにも)

KPI-12-435 SWR  vs Freq.

右図は対周波数SWR特性。赤が実測値、黒はMMANAのシミュレーション。
どうも、周波数的に少し下にズッているようである。また、バンドエッジはシミュレーションでSWR>1.5なのに実測値がいい。これはケーブル(8D2V)を10m以上経由しての計測だから*7か。

MMANA data file
KPI-12-435d.maa ←適当にお使いください。


さて、問題の145MHz用のアンテナである。
当初、普通の八木宇田アンテナで走っていた。7エレの設計ができ、ブームやエレメントの材料を調達し、ラジエータ*8を除いた6エレ分ができたところで、ふと考えたのが、「なんかラジエータ作るのメンドいな」・・であった。(おぃ ^o^;)

それだけなら、まぁ粛々と作業続行するところなのだが、単なる7エレだと「意表を突けない!!」ということに気づいたのである。435MHz用もキットの改造で済ましちゃったし、ここはなんとかせねば・・・こうなると、もう元へは戻れない。しかしながら、買ってきた材料は無駄にしたくない。となると、八木系でマイナなやつといえば・・・かつてKPIも開発に参加した「Hヘンテナ」だ。しかも、こいつならば給電部の処理は極めて単純/簡単だ。

早速、MMANAで設計を開始。7エレのつもりだったが、どうも6エレにした方が良さそう。こりゃ、かなりのワイドスペースだ。

エレメントは、12mm+12mmのアルミLアングル材、ブームは15mm×15mmの角パイプ。エレメントは、接着剤を併用しつつ2個のタッピングビスでブームに取り付けてある*9

なお、日本放送出版協会刊「ハムのアンテナ技術」(1975)によれば、Lアングル材の円形断面への変換は、「L」の各辺をa,bとすれば、b=a→r(半径)=0.393a。b=2a→r=0.603a。b=3a→r=0.826a・・とのことである。*10このことから、MMANAでは、12mmのLアングルを半径4.72mmのアルミ丸棒として計算させている。

6elements H-Hentenna and 12elements Yagi-Uda Beam Toward Satellite

Hヘンテナは、単一指向性化させると給電点インピーダンスが200Ω程度に上昇する。このため、同軸ケーブルを使った「Uバラン」で1:4のインピーダンス変換をおこなう。

このUバラン部分には、手持ちの5DFBを使ったのだが、これがフジクラ等の有名メーカのものではなく、メーカ名が表示されていない怪しい5DFBなのである。普通、FB系ケーブルの波長短縮率*11は0.8ということになっているが、本当だろうか?・・と、アンテナアナライザでケーブルを調べてみる*12と、どう見ても0.73*13、まけてやっても0.75と出た。今回は、とりあえず波長短縮率=0.75でUバランを作ってある。つまり、迂回部分は77cmだ。

給電部のエレメントは、直径2mmの普通の銅線。給電部の反対側の黒いスペーサみたいなのは、そのとおり単なるスペーサで、プラスティックの棒である。給電部に同軸ケーブルの重さ等による張力が加わるため、これに対する補強の意味で入れてある。

hhu-6-145 SWR vs Freq.

MMANAの計算では、給電用エレメントの接続点はブームから93mmのポイントということになっていたが、実エレメントでは計算値から数mmマイナスした85mm付近でSWR最小となった。*14

右図は対周波数SWR特性。赤が実測値、黒はMMANAのシミュレーション。
145MHz用のこちらは、それなりにシミュレーションに近い実測値となっている。

MMANA data file
hhu-6-145d.maa ←適当にお使いください。


追記: H-Hentennaのいいところは、給電部の工作が楽=つまり、構造が単純ということである。

欠点としては、F/S比があまり良くないということがある。また、給電部からの輻射が結構あり(これがF/S比の悪さの一要因でもある)、結果的に水平偏波使用でのビームティルト*15や、若干ブームに波が乗ってしまうことになっている。ここらへんがHB9CVや8JK等と異なるところで、S/Nを追求するには不向きなアンテナなのかもしれない。(^_^;)



というわけで、これら2つのアンテナをルーフキャリアに積み、一路 04008C 藤里町(QN00CH)へ。別にどこでもいいんだけど、ま、雪の状態を見たかったということで。

衛星の軌道をチェックすると、AO27は無理っぽいものの、なんとか15:50からのAO-7には間に合いそう。
FT100と50MHz用のルーフサイドホイップで29MHzを聞きつつ、145.890MHzでおそるおそるVVV・・・を打つと・・・おぉぉぉっ!!聞こえる、聞こえるぞ。AO-7で初めてループ確認できた。もう思い残すことはありません(嘘 ^_^;)。

ここまではよかったが、しつこくCQ出しても誰も呼んでくれず、結局ゼロ交信。受信アンテナが50MHz用だし、変換プラグを忘れてヘッドホンが使えなかったので耳(感度)がイマイチだったのだけれど、誰か呼んでくれましたかね??

気を取り直して、16:36からのFM衛星、SO50にQRV。この衛星は初めて使う。おぉ、自分が送信してから、ちょい遅れてダウンリンクの送信がONになるという感じ。CQ出して、2局から呼んでいただいた。もう少し呼ばれると思ったんだけど・・昼間のFM衛星って、こんなもんなのかしらん。(^_^;)

そう、最初はこんなものだろう。まずは成功ということにしよう。

*1 ブラケットじゃなく、エレメント・クランプという呼び方もあるようだ。

*2 CQ出版刊「作るUHFアンテナ」(1995)にも掲載されているが、現在このキットは販売されていない。

*3 元々のブーム径は16φと14φ。今回は16φの方を使用。

*4 「φ」は「直径」のことなんだけど、「ふぁい」じゃなく「まる」と読むのが正しいそうだ。Diameterから「ダイア」とも。

*5 BIJさんスミマセン。でも、実際に18エレを山の上で組んでみたら、やっぱしもっと丈夫であってほしい・・・と。

*6 しかし、呼ばれる側になるとすれば、もう少しブロードな指向性の方がいいのかも。

*7 ケーブルの損失により、SWRが改善されたかのように見える現象。

*8 近頃は「ラジエータ」じゃなく、「ドリヴン・エレメント(Driven Element)」といっているようだ。

*9 タッピングビスだけでは、弱い。1個の大きなボルトナットで留めた方がいいのではないかという気もする。

*10 幅aの平棒は→r=0.25aとのこと。他の任意形状断面から円形断面への変換資料、どこかにないですかね??

*11 速度係数ともいう。誘電体中での電磁波の伝搬速度は、真空中の速度(光速)よりも遅くなる。

*12 λ/2先端開放のケーブルはインピーダンス最大、同短絡でインピーダンス最小(ゼロ)になることから逆算。

*13 正規の値の0.8との差分だけ誘電体損失が大きいともいえる。ま、無印だしね。

*14 調整のため、あらかじめ複数の取付け穴を開けておいた。

*15 ということは、垂直偏波では、給電部を上にするか下にするか若干悩む必要もある。

Tada/JA7KPI : 2007年11月24日(土)

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